「豚汁」「おでん」――次の日ラクする“時短料理”という考え方【おいしい思い出 vol.4】

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クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪

承認欲求が強くて困ってしまう

とってもとっても変な趣味だと言われそうだが、自分がSNSにアップした手料理写真につく“いいね!”やコメントの分析をするのがとっても楽しい。いや、分析と言うにはおこがましく、言ってしまえば何も根拠がない、私の勝手な、いや超適当な妄想なのかもしれない。

投稿する前には、この写真にはどれだけ“いいね!”がつくかなとか、これは瞬間風速で“いいね!”がつくんじゃないかとか、この写真だとあの人が“いいね!”してくれそう、さらにはあの人がシェアしてくれそうだ……などと、ひたすら考える。そうしてあれこれ予測を立てた後、ニヤニヤしながらようやく投稿ボタンを押す。

予想通りにいく時が多いけど、もちろん思い通りにいかない場合もあり、そんな時には投稿したテキストをちょこちょこ変えてみるなど、姑息な修正もしてみたり。

暴露ついでに言ってしまうと、投稿してしばらく経った内容を振り返って見ながら、“いいね!”をつけてくれた人はどんな気持ちで“いいね!”したんだろうとか、あの人が“いいね!”してくれない理由は何だろう、そんなことを考えてまた楽しい時間を過ごせたりする。

何だかここまで行くと、承認欲求を満たすレベルを超えて、ちょっと変な人と言われてもしょうがない。

料理で癒されたい

私の投稿はほとんどが毎日の料理写真になるので、基本的に“いいね!”してくれるのは同年代の料理好きで子どもを持つ女性が多い。けれど、普段は外食が多い女性や、めちゃくちゃ仕事の忙しい男性に、なぜかやたら“いいね!”される率が高い料理があることに気づいた。

それは何かと言うと、夏は「冷汁」、少し寒くなってくると「豚汁」、冬は「おでん」

面白いくらい、この料理を作るといつもとは違う“いいね!”とコメントがずらっと並ぶ。普段あまりない男性からのコメントもシェアも増える。

私が作るこれらに共通しているのは、出汁が効いていて、一品で美味しい料理であること。見た目は全然華やかではなく、というか茶色っぽくて、正直インスタ映えしない地味な色合いである。

昔ながらの家庭料理、もしくはお袋の味、思い出の味だから? いやいや、忙しくて疲れているから、お料理でほっとしたいのかも。癒やしを料理に求めているのかな、とも思う。

家庭ならではの贅沢料理

ちなみに、私の作る冷汁も豚汁もおでんも、簡単なようでとても手間暇がかかる料理である。

真昆布を前日から浸しておいて、翌日にまず丁寧に鰹節を削って一番出汁をひく。おでんであれば、たくさんの種類の野菜を使うし、大根は下ゆでも必要だし、冷汁であれば、味噌なども香ばしく炙っておいたりと、何かと手間がかかる。

ふと思い立ってパパッと作ろうとしても、なかなか作れない料理だ。だからこそ、手間暇かけたその分だけ、じわじわくる美味しさがしっかり料理に表現されていて、できあがったその日だけではなく翌日もとても美味しい。人によってはむしろ翌日の方が美味しいという人もいる。

素材のうまみがギュギュっと詰まっていて、2日目特有の素材から出る少々の雑味も許せてしまうくらい。レストランでは絶対に味わえない、家庭ならではの贅沢料理だと思う。

究極の時短料理かも

平日はバタバタとしている私は、豚汁もおでんも時間がある週末、日曜の昼間からじっくり作ることが多い。

ただそれだけ時間をかけた日曜から一転、翌日の月曜日は何にもしない。仕事を終えて家に帰っても鍋を温めるだけ。この日は何とも言えないくらい、とっても気楽なのだ。

にも関わらず、娘も夫も「やっぱり作った翌日の方が美味しいよねー」と口をそろえて、とっても嬉しそうに食べてくれる。豚汁やおでんって、実は私にとっては時短料理なのかもって思うようになってきた。

そうそう、私の周りには料理をする男性も増えてきていて、ここ最近、週末になると「小竹さんの投稿を見て作りました」と、手間暇かけて豚汁を作ったことをSNSで報告してくれる男性が何名も登場し始めてきた。

週末料理男子にとっては、心をくすぐられるほど良い手間のかかり方で作りがいがあるだろうし、超豪華なローストビーフを焼くよりも家族評価が高いに違いない。(我が家に限って言えば確実にそう)

寒くなってきたし、今週末は我が家も豚汁にしようかな。


小竹貴子

Dffec93b2e01878fbff1a0f0a86003e4 クックパッド株式会社ブランディング・編集部担当本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰。現在、日経ビジネスオンラインにて『おいしい未来はここにある~突撃!食卓イノベーション』連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。

クックパッド編集部

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