以前、クックパッドニュースで「卵が引き起こす食中毒の危険性」についてお伝えした際、名前が挙がった「サルモネラ菌」。汚染される主な食品は卵だけでなく、実は肉類や野菜、うなぎなどの水中生物にも潜んでいるのです。最近はサルモネラ菌による食中毒は減ってはいるものの、全くなくなったわけではありません。今一度「サルモネラ菌」を正しく理解して、おいしく安全な食事をめざしていきましょう。
サルモネラ菌は、鶏、豚、牛などの動物の腸管や河川、下水など自然界に広く分布している細菌です。熱に弱いため、加熱すればほとんどの菌が死滅しますが、乾燥や低温にも強く、冷凍しても死にません。しかもサルモネラ菌は、腸炎ビブリオ菌や黄色ブドウ球菌と比べて、それほど多くない菌量でも感染し発症する場合もあります。
菌に汚染された食品を食べてから12~48時間で、食中毒の症状が発症します。主な症状は腹痛、下痢、発熱、嘔吐などで、時には脱水症状を伴います。症状に差がある場合もあり、抵抗力の弱い幼児や高齢者では注意が必要です。
汚染される主な食品は卵、肉類や野菜、うなぎ、スッポンなど。卵に関しては、基本的に生のままでも食べられる安全な食品です。最近は衛生管理もしっかりされており、サルモネラ菌自体が卵から検出されることはほとんどありません。それでもまれに1万個に3個くらいは検出されることがありますが、その場合、卵の殻についていることがほとんどで、中で繁殖しているケースはあまりないため、新鮮で殻にヒビがないものを冷蔵庫で保管し、期限表示内に食べれば心配はないでしょう。
卵を割った状態で放置したり、割れたまま冷蔵保存することは避け、割ったら直ちに料理しましょう。加熱したものは常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくすることを心がけてください。加熱したからといって過信せず、なるべく早く消費しましょう。
卵のほか、最近問題になっているのが「鶏肉」や「野菜」によるサルモネラ菌です。例えば、家庭で鶏の唐揚げを作る方もいると思いますが、その際に中心部分にまで火が通っていない状態で食べてしまうと、カンピロバクターやサルモネラ食中毒になる可能性があります。
牛肉については、生食用の基準が満たされたもの以外はすべて加熱用で、牛のレバーや豚肉(内臓を含む)については、生食用として販売は禁止されています。しかし、鶏肉には生食用の基準がありません。だからといって、生で食べても安全というわけではなく、鶏肉は肉の組織が強くないため、菌が中に入り込みやすく、汚染を受けている可能性があります。家庭で鶏肉を調理する場合は中心部分のピンク色がなくなって、完全に白くなるまで加熱してください。
ただし、細菌は少ない量だと加熱により死滅しますが、量が多いと加熱しても一部残ってしまうことがあります。高い気温の状態で放っておくと菌が増えるので、お肉は冷蔵庫から出したらできるだけ早く調理します。調理を中断するときは、冷蔵庫に入れておくようにしましょう。
肉を解凍する際は、レンジを使い短時間で解凍する、もしくは冷蔵庫でゆっくり解凍したほうがよいでしょう。常温で解凍すると、解凍された表面から菌が繁殖してしまいます。冬場でも部屋の中は暖房などで暖かくなっているため、季節関係なく常温解凍はやめましょう。
最近では、幼稚園の給食で、園児たちがサルモネラ食中毒になるというニュースがありました。調査の結果、ミニトマトからサルモネラ菌が検出されました。そのまま食べる生野菜、特にサラダに使う確率の高いトマトやきゅうり、レタスは注意が必要です。
ミニトマトはへたの部分をしっかり取って流水で洗い、レタスなどの葉物野菜は1枚1枚丁寧に洗いましょう。そのほか、玉ねぎも皮で包まれているからといって安心なわけではありません。皮の間から菌が入りこむ場合もあるため、サラダなどに使う場合はよく洗ってから使いましょう。
特に見落としがちなのが、まな板や料理の下ごしらえに使ったバットを、洗わずに再び使ってしまうこと。十分に洗わず、肉を切ったまな板で生の野菜を切ったり、出来上がった料理を加熱前の肉を置いていたバットに戻してしまうと、せっかく加熱しても、そこから汚染が広がります。
また、生の肉を触った手にも注意が必要です。その手を洗わずに別の食材を触ることで汚染の可能性が高まります。汚染された調理器具や手指を介しての二次汚染を防ぐためにも、生肉、生野菜、卵を扱うときは、調理前と後の調理器具は分けて、手指と調理道具はよく洗うようにしましょう。
参考文献
東京都福祉保健局:
「サルモネラ属菌」
「卵の衛生的な取扱い」
日本食品衛生協会:
「知ろう!防ごう!食中毒(食中毒菌などの話)」
「知ろう!防ごう!食中毒(卵の衛生的な取扱いについて )」
愛知県食品衛生協会
目黒区生活衛生課
農林水産省
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