【ほっこり江戸ごはん Vol.3】江戸好きが高じて、地毛で「ちょんまげ」まで結ってしまった江戸マニアの伊尾木将之さんに、江戸時代のレシピとともにほっこりエピソードを教えてもらいます。今回は、 江戸時代初期に醤油代わりに使われていた「煎り酒」をご紹介。
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
江戸時代が大好きで江戸の食文化を研究している伊尾木と言います。
江戸時代とは関係ないのですが、先日子供の5歳の誕生日に天体望遠鏡を買ってあげました。
とても喜んでくれたんですが、暗い場所が嫌いなようで、まだ夜に天体望遠鏡を使おうとしてくれません。。。もっぱら僕が一人で月を見て盛り上がっているだけです。
さて、そんな個人的な話はおいておいて、第3回目に紹介するのは「煎り酒」という調味料です。
酒といっても煮詰めてアルコールを飛ばした調味料で、梅の風味が効いてさっぱりしたおいしい調味料です。
煎り酒は、醤油が登場する以前から食べられていました。醤油が普及するのは江戸時代中期くらいからなのですが、煎り酒は室町時代から作られていました[1]。とっても歴史が長いですね!
作り方は簡単です。材料は日本酒、梅干し、鰹節だけです。
まず、梅干しの種を取って、実を細かくします。
梅の風味を抑えたいときには、実を細かくせずに丸のままでも大丈夫です。
日本酒、梅干し、鰹節を鍋に入れます。梅の風味を強くしたい場合は種も入れてください。
半分くらいになるまでに10分くらいグツグツと煮詰めてください。ざるにあげて、汁を取り出したら完成です!
醤油と同じようにお刺身に使うのもいいですし、そうめんのツユや、サラダのドレッシング代わりにするのもおいしいですよ!
ちなみに、醤油と同じくらいメジャーな調味料でしたが、保存が効きにくいので、徐々に醤油に取って代わられたと言われています[1]。
江戸時代は現代に負けず劣らず、お酒大好きな時代でした。
煎り酒の日本酒は、元の文献では「古酒」を利用するように書かれています。
これは、古くなった悪い酒というわけではなく、わざわざ熟成させた日本酒のことです。ワインやウイスキーを寝かせて飲むことがありますが、それを日本酒でやっていたわけです。
また、当時の江戸で飲まれたお酒の量は毎年90万樽以上でした。これは1人あたりにすると、現代の全国平均とほぼ同じような量です[2]。
ただ、当時は基本的に日本酒などですので、現代のビールや発泡酒よりもずっとアルコール度数が高いお酒を飲んでいました。
また、大酒飲み大会なども開催されていました。
江戸はなんとも酔っぱらい天国だったのです。
参考文献
- [1] 大久保洋子, 「煎り酒について」, 日本醸造協会誌 112(3), 2017.
- [2] 飯野亮一, 居酒屋の誕生, 筑摩書房, 2014.
大阪出身のうさぎ好き。修士までは物理を学び、博士課程で情報系に進むも撃沈。現在はクックパッドでエンジニアをしながら、食文化を研究している。
日本家政学会 食文化研究部会の役員を務める。
2020年秋から社会人大学生(文学部)に。
本業は川崎フロンターレのサポーター。