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コラム

「家事をしなくてはいけない」という呪縛を解きたい。漫画家・ひうらさとるさんに聞く、心地の良い暮らし方

女性漫画誌『BE・LOVE』で連載中の『西園寺さんは家事をしない』。自由なひとり暮らしを満喫していた“家事をしない”家事アプリ社員の西園寺さん(38)が、ある日突然、秘密を持つ年下男子と一緒に暮らすことになることからはじまるストーリー。「家事ができない」でも「家事が苦手」でもなく、「家事をしない」というこのタイトル、ものすごく惹かれませんか? 今回は、作者のひうらさとる先生に、この作品の誕生秘話や、ひうら先生の家事にまつわるお話を聞きました。

「家事ができない」ことを隠す時代ではない

――今回、 “家事“をテーマにした作品を描こうと思ったきっかけを教えて下さい。

最初のきっかけは、「“時短家事”をテーマにした漫画を描きませんか?」というご提案をいただいたことなんです。時短のHow to的なものを描いた作品は他でも出ていたので、いろいろな人のアイデアを取り入れた見せ方ができないかな? と考えました。それで、家事が苦手な独身女性と、タイプが異なる年下の男の子が疑似家族になっていき、みんなが過ごしやすい家事の仕方を模索していく…というストーリーになりました。

『西園寺さんは家事をしない』1巻より ©️ひうらさとる/講談社

――主人公・西園寺さんは、家事アプリ会社に勤めているが自身は家事をしない……というのがおもしろいポイントですが、こういった設定にしたのはどういった意図があるのでしょうか?

最初にイメージした主人公は、家事ができないことを内緒にして、できるふりをしているバリキャリでした。でも、今回作品を描くためにいろんな方の取材をしたら、今って、家事ができないことを隠す時代ではないということがわかったんです。もっとサバサバしていて、家事ができないことも公言していて、できないからこそユーザー目線になることができて仕事に役立っている。そういう主人公のほうがおもしろいかなと思い、時代に沿ったキャラクターにアップデートされていきました。

『西園寺さんは家事をしない』1巻より ©️ひうらさとる/講談社

――作品を読むと、まさに“今の時代”が反映されていると感じます。

人の話を聞くのが好きなんです。自分が古い人間だという自覚もあるので、若い方の意見をどんどん取り入れていきたいなと思っています。最近も30代の編集者さんが、私の作品を高校生のときから読んでくれていると言ってくれたので、「今やっているドラマで違和感があるものは?」という質問をしたら、いろいろな意見を聞かせてくれました。

家事分担を50:50にするのは難しい

――ひうら先生ご自身は、家事全般をどのようにこなしていますか? 旦那さまとの家事分担はどうしているのか気になります。

我が家は、夫がわりとなんでもやってくれるタイプなんです。こういう話をすると、「良いですね!」と言われるんですが、できる人ってそれだけうるさいんですよ(笑)。ちゃんとこだわりがあるので、一緒に住み始めた頃はお互い許せないことが違ってよくぶつかりました。

『西園寺さんは家事をしない』でも、完全に50:50で家事分担するというエピソードがあるのですが、実際それをやると上手くいかないんですよね。すべての作業をはっきり分担すれば良いというものでもないし、そこにはロジカルでは片付かない感情というものが入ってくるので。お話では、『“どうしても気になること”、“やってて苦にならないこと”を各々やるというのが、一番効率良く結果も大きい』という結論になりました。

『西園寺さんは家事をしない』1巻より ©️ひうらさとる/講談社

――こだわりがある旦那さんと、うまく家事を分担する秘訣はありますか?

例えば、トイレットペーパーを替えると芯がでるじゃないですか。昔、それを適当にそこら辺に置いていたら怒られて家出したことがあります(笑)。最初の頃は、そういう小さな不満がいっぱいあって、事あるごとに大喧嘩に発展するということがありました。最近は、「あなたが得意なら私は撤退します」と引くようにしているんです。うちの場合、やらないことに対して相手は怒らないので。「やってもらって当然」というのはだめだけど、「やってくれてありがとう」という感謝とリスペクトを伝えることで、だんだん旦那さんのほうが得意なことをやってくれるようになりました。

――完全に分担ではなく、それぞれが得意なことをやるというのは良いですね! 先生は何がお得意ですか?

水回り掃除の仕方にこだわりがあるので、トイレや洗面台は私が担当しています。夫も掃除が好きなので、水回り以外での私が担当しているのはルンバをセットするくらいかな(笑)。あとは、整理整頓や断捨離が好きです。反対に夫は物持ちで、クローゼットにはたくさん洋服が詰まっていたりするのですが、私は自分のものだけを整理するようにしています。そうして心地よく生活をしていると、それを見た家族も影響を受けるからと言われたことがあって、すごく納得したんです。人から「捨てろ、捨てろ」と言われても、意固地になるけど、私が自分のまわりをすっきりさせると、夫も「俺もやろうかな」と自ら動いてくれるんです。

――素晴らしいですね。先生ご夫婦の仲良しの秘訣は?

掃除をしているのを見ていても、「ここは細かいのに、床に水が飛んでいても気にならないんだ」みたいなことってあるじゃないですか(笑)。そういうことを不満に感じはじめるとダメですよね。私は、やらなきゃいけないという意識をなくすことを意識しています。「妻がやらなきゃいけない」という思い込みと、「もう少しやってくれたらいいのに」という気持ちをあまり溜め込まないようにして、コミュニケーションを大切にしているんです。会話が減ると、本当にいろんなことがうまくいかなくなるから、会話ってすごく大事です。

我が家では、夜に夫婦でお酒を飲みながら会話をすることが多く、その時に「あの言い方、いやだったな」とか、思ったことを正直に伝え合っています。お昼に喧嘩をしても、この晩酌で仲直りしますね。しっかりコミュニケーションを取ることが、夫婦がうまくいく秘訣かなと思います。

「家事をしなくてはいけない」という呪縛を解く作品に

――「やらなきゃいけない」、「やってもらって当たり前」のような思い込みをまずはやめて、思ったことは伝えていく関係性作りがいいんですね。

『西園寺さんは家事をしない』の読者からのコメントには、「西園寺さんが家事をしなくて良いと言ってくれて楽になりました」という声がたくさん届きます。やはり、「家事をやらなきゃいけない」と思っている方は多いんですよね。

あと、「本当は夫と家事分担を半々にしたいけど、何もできない夫にイチから教えるのか……と思うと、もうワンオペでいいやと諦めてしまう」という話もよく聞きます。逆に男性側からは、「何をやっても怒られる」という話を聞きます。「頑張ってみたけど、奥さんのため息が聞こえてくると辛くなる」と。お互いの気持ちを正直に伝えあってみたら、何か解決するかもしれません。

――『西園寺さんは家事をしない』は、とてもインパクトのあるタイトルですが、このタイトルはどのような思いが込められているのでしょうか。

家事って生き方が出るなと思っているんです。西園寺さん自身も、堅い家に生まれて、専業主婦のお母さんを見て育ったことで、「女が家事をしなくてはいけない」という刷り込みができてしまっていたんですよね。この作品は、その呪縛を解いていくものにしたいなと。タイトルを考えたとき、「家事ができない」というニュアンスのものも考えましたが、それってすごくネガティブになるので、「しない」という意思があるものにしました。

――この作品のために、いろいろな方にインタビューをされたということですが、その中で“家事”に対しての世代的な違いはありますか?

今の若い方って、亭主関白意識の人が少ないなと思いました。どんどん参加するようになっている。全く料理をしなかった旦那さんが、ダイエットをはじめたことをきっかけに、たんぱく質多めの料理とかを作りだしたら料理にはまったという話も聞きました。今はしていなくても、何をきっかけに料理や家事にはまるかわからないですよね。誰にだって得意なことがあるはずだから、最初から「できない」という決めつけをするのはよくないなと思いました。

――家事を「やってみたい!」と思えるきっかけ作りも大切ですね。

旦那さんにもっといろいろやってほしいと思うなら、任せた方が良いと思うんですよね。「手伝ってくれる?」ではダメだと思います。あと、SNSでも、「家事は大変」とか「子育てはつらい」というものばかりが目に入って、「つらいものなんだ」「大変なんだ」となってしまうのは良くないなと。ネガティブな発信ばかりではなく、「楽しい」「面白い」という発信だってあって良いですよね。私自身は子育てをすごくおもしろがっていたので、作品を通して、自分が楽しかったとを伝えようとしています。

とは言え、家事、育児をうまく振り分けている人もいるけど、まだまだ女性の方の負担が大きいんだなということは、取材を通じて感じました。

――最後に、クックパッドニュース読者にメッセージをお願いします。

家事をプレッシャーに感じずに、楽しんでできるようになったら良いなと考えながら描いています。西園寺さんの生き方を見て、「家事をしなくてはいけない」という呪縛を解いてくれたらと思います。ぜひ一度読んでみてください。

(TEXT:上原かほり)

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ひうらさとる

1984年「あなたと朝まで」(なかよしデラックス8月号)でデビュー。1986年ロンドンからやってきた恋のキューピッドが活躍する「ぽーきゅぱいん」が大ヒット。以後、「レピッシュ!」「月下美人」「プレイガールK」、テレビドラマ化され話題を呼んだ「ホタルノヒカリ」など、代表作を次々と発表。ポップでキュートなシンデレラストーリーが読者の心をつかんでいる。 BE・LOVEで「西園寺さんは家事をしない」連載スタート!

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