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コラム

「充てん豆腐」って⁉︎徳島の小さな村で見つけた衝撃の充てん豆腐

【工藤詩織の「お豆腐」を求めてぐるり旅 Vol.5】お豆腐の魅力に取り憑かれていると言っても過言ではない、無類の豆腐好きである工藤詩織さん。あちこち旅をして出会った、日本各地の個性豊かな「お豆腐」たちを紹介していただきます。読めば、あなたもまるで現地を訪れたような旅行気分が味わえますよ! 第5回目は、知っているようで知らない「充てん豆腐」をご紹介します。

「充てん豆腐」とは?

「充てん」という言葉には「空いているところにものを詰めて満たす」という意味があります。文字通り、容器と豆腐に隙間がなく、容器に水が張られていない豆腐のことです。三段重ねのパックをはじめ、形や大きさもさまざまなバリエーションがある「充てん豆腐」は、スーパーマーケットの発展とともに普及した商品といえます。一方、伝統的な豆腐は「カット豆腐」と呼ばれ、一度型箱で大きな豆腐をつくり一丁サイズにカットしてパック詰めしています。

徳島の小さな村で見つけた衝撃の充てん豆腐

充てん豆腐に対して、生産量が多く安価で、味よりも日持ち重視で作られている、という印象を持っている方もいらっしゃるかもしれません。私もどちらかと言えば、味わいよりも利便性がゆえに充てん豆腐を手に取っていた一人でした。

しかし、そんな充てん豆腐の概念を覆した衝撃の一丁があります。それは、徳島県の唯一の村、佐那河内村(さなごうちそん)の豆腐店「村のおっさん 桑原豆腐店」の充てん豆腐です。4代目である店主の“おっさん”こと桑原年朗さんは「ワイが喰うてうまいもんを造る」を信念に独自の研究を重ね、粘度の高い濃厚豆乳を充てん方式で固めた濃くてまろやかな『充填こいまろ』を考案。

箸ではつまめないほどのとろけるような柔らかさと、凝縮された北海道産大豆の甘みと風味は一度食べたら忘れられません。味わいはもちろん、ネーミングやパッケージにもインパクトを持たせた極上の充てん豆腐たちは、地元だけでなく県外にも熱烈ファンを生み出しています。

「村のおっさん」夫婦の新たな挑戦

そしてこの度、店主の年朗さんと私の友人でもある豆腐マイスターの小百合さんがめでたく結婚し、挙式にお招きいただきました。披露宴では充填こいまろ入りの前菜が振舞われ、ケーキ入刀のシーンでは、年朗さんのお手製の豆腐が現れ「豆腐入刀」のサプライズ演出! 豆腐で結ばれた2人だからこそできる素敵な結婚式でした。

小百合さんが加わりますますパワーアップした「村のおっさん 桑原豆腐店」の新たなチャレンジは、なんと飲食店の開業! 工房に併設した食堂スタイルで、できたての豆腐や、充填こいまろの揚げ出し豆腐、本場沖縄仕込みの「ゆし豆腐」など、ここでしか味わえない限定メニューが楽しめます。オープンは8月中を予定。私も再び佐那河内村に足を運べる日を楽しみにしています。

『充てんこいまろ』の他に、希少な青大豆を使った充てん豆腐やスイーツになる黒糖入りなども

【ウェブサイト】村のおっさん 桑原豆腐店
【Instagram】@tofu.muranoossan

工藤詩織(往来/豆腐マイスター)

幼少から豆中心の食生活を送り、豆腐がいつも暮らしの中心にある無類の豆腐好き。日本語教師を目指して勉強する過程で、食文化も一緒に伝えたいと「豆腐マイスター」を取得。国内にとどまらず海外でも、手作り豆腐ワークショップや食育イベントを実施して経験を積む。2018年より「往来(おうらい)」をテーマに本格的に活動を開始。豆腐関連のイベント企画・メディア出演などを通して、各地で豆腐文化の啓蒙活動を行っている。「マツコの知らない世界」(TBS系)、「ヒルナンデス」(日本テレビ系)、「ごごナマ」(NHK)等へ出演。
【Facebook】まめちゃんのダイズバーシティ計画!
【Instagram】@tofu_ a _day

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