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インタビュー

「食器洗いまで全部楽しい」為末大さんが料理に見出す美学

昭和の時代からなんとなく受け継がれる「料理は女性のもの」という“常識”は、令和の時代も変わらないのか? そんな疑問から、クックパッドが実施した調査によると(※)、日本の男性の約4割は実に週に4回以上も料理をしていることが明らかに。今回は「父の日」に合わせて、各界で活躍しながら日常的に料理を楽しむ男性たちに、料理を始めたきっかけや、忙しい日常の中で料理をし続ける意味についてお話を伺いました。

毎日の朝ご飯作りを担当

――為末さんはトップアスリートとしての経験を生かしてビジネスの世界でもご活躍を続ける傍ら、8歳の男の子を育てる父親としての顔もお持ちです。就学前のお弁当作りも楽しい習慣だったとか。最近はどのように料理に関わっていますか?

比較的、頻繁に料理をするほうだと思います。朝ご飯は基本的に僕が作りますし、晩ご飯も週に2、3日。日中も自宅にいる日は3食すべて作ることもありますよ。

妻も料理はしますが、早起きは僕のほうが得意なので、朝ご飯作りは僕の担当が定着しました。6時半に食べるのを決まりにしているので、毎朝5時くらいに起きて30分ほどかけて準備をしています。

――どんな献立を作ることが多いですか?

朝ご飯はシンプルに、ご飯と味噌汁、息子が好きな納豆と卵焼き、それからハチミツを入れたヨーグルトくらい。前の晩に残ったおかずを出すことも多いですね。野菜は、ブロッコリーやスナップエンドウの頻度が高いです。小さい頃から息子が大好物で、これまでどれだけ消費したか分かりません。

夜のメニューは幅広くて、カレー、肉じゃが、筑前煮、豚汁、たこ焼きとか。僕の母が山登りが好きで山菜をよく送ってくれるので、たらの芽の天ぷらやこごみの煮物のような山菜料理もよく作ります。

大学の寮生活で磨いた料理スキル

――本格的ですね。料理のスキルはいつ身に付けたのでしょう?

興味と技術の両面についてそれぞれふり返ると、興味については父の影響だと思います。父が家の台所で好きな一品を作っては、それを肴に楽しそうにお酒を飲んでいる姿を見ていたので、自分で料理を作ることに自然と興味が湧いたのでしょうね。

技術は、大学生時代の寮生活で磨かれたのかな。僕が通っていた大学の寮では、1年生が寮生40人分の料理を作るという持ち回りの当番ルールがあったので。嫌がる友人もいましたが、僕はそれほど苦にならなくて、カレーや唐揚げ、麻婆豆腐、豚の角煮とか作っていました。それから社会人になって20代半ばで一人暮らしを始めたので、ほぼ毎日自炊が習慣になりました。

ついでに知識の面でいうと、アスリート時代に栄養学の基本は勉強したので、なんとなく栄養のバランスは気にしているかもしれませんが、それほど真剣ではなく。息子に対しても「なんでも残さず食べなさい」と強制はせずに、よく食べるものを中心に食べさせています。

買い物から片付けまで全工程が楽しい

――為末さんの生活の中に、とても自然に料理が溶け込んでいるのですね。

そうですね。単純に、僕は料理が好きなのだと思います。料理の前の買い物から、食べた後の片付けも含めて、一連のプロセスが好きなんです。「片付けが面倒だから続かない」という人もいるみたいですが、僕は物をオーガナイズ(整理)するのが好きなのでむしろ楽しい。食事をしたら、食器を洗って、あるべき場所にしまって、テーブルの上とシンクをきれいに掃除する。ここまで完了して「料理」です。実家の母も毎食後にテーブルをスッキリ片付けるタイプだったので、子どもの頃に過ごした環境が影響しているのかもしれないですね。

料理が身近だと、街で見かける店頭の野菜や魚が「食材」として見えてきて、旅先の食文化も知りたくなる。「これを使って何を作ろうか?」「これはどうやって作るんだろう?」なんて、もしかしたらずっと料理のことを考えているかもしれないです。

――そんな為末さんの「イチオシレシピ」を教えてください。

これからの時期におすすめなのは「白茄子の天ぷら」かな。洗って水気を拭いた白茄子に、ニンニクパウダーを混ぜた片栗粉をまぶして揚げるんです。表面はカリカリなのに、中はトロトロでめちゃくちゃおいしいですよ。食感を楽しみたいので、塩でいただきます。

これはたしか、お店で食べておいしかったので見よう見まねで作ってみたら、それなりの出来になったんです。すぐに食べ切れなかった分は揚げ浸しにアレンジして、醤油と酢をベースにしたタレに漬けて大葉と一緒にいただくと、これもまたおいしい。これが作りたいから、スーパーで白茄子を見つけるとテンション上がります(笑)。

あと、最近だとリゾットのおいしい作り方を覚えたので、時々作っています。

――リゾットの上手な作り方、ぜひ教えてください。

詳しい人に聞いてみたら、ご飯以外の具材を先に炒めて、うまみが油に溶け出した後にお米を入れるといいらしいんです。お米がうまみを吸うのかな。試してみると、たしかにおいしく出来上がったのでリピートしています。

油といえば、鶏肉の皮をじっくり炒めてから作るチャーハンもうまいです。鶏皮からジュワーッと出てきた油だけを使って具材とご飯を炒めるんです。カリカリになった鶏皮を切ってトッピングしたり。絶対に体に悪いと思いながら(笑)。

――そういったワザはどこで仕入れるのでしょうか?

ウェブサイトで検索して調べることが多いです。食材から考えるときには「クックパッド」は重宝していますよ。

チャレンジしたいのは低温調理器

――これだけ為末さんが料理を楽しんでいるのでしたら、息子さんも料理に興味を持つのでは?

たしかに彼も好きみたいですね。僕もよく一緒に作りますし、近所で子ども向けの料理教室を開いてくださっている方がいて、楽しんで通っています。

作るメニューは、僕よりもインスタ映えする「見た目重視」の料理が多くて、最近は卵トロトロのオムライスに挑戦していました。TikTokやYouTubeで流れてきたレシピを作るのが好きみたいです。「自分で作れそうだから作ってみたい」という素直な好奇心なのでしょうね。この間は、一緒にケーキも作りました。

息子さんと一緒に手打ちしたお蕎麦

――為末さんが今後チャレンジしてみたい料理はありますか?

気になっているのは「低温調理器」を使った料理です。ローストビーフがどうしてもパサパサする悩みがあるんですけれど、「低温調理器を使えば完璧にしっとり仕上げられる」らしいので。あと、オーブン料理は未開拓なので学んでみたいです。

――これから料理にチャレンジしたい男性に向けて、メッセージをお願いします。

料理、楽しいですよ。僕はすごく「知的な作業」だと思っています。白茄子を油で揚げて「外はカリカリ、中はトロトロ」にするために、何が必要なのか。失敗したとしても改善ポイントを見つけて腕を磨くステップを面白がる人は多いんじゃないかな。理想の完成形をイメージして、「どのプロセスに、どの要素が必要なのか」と逆算して考える。プロに聞いて真似ることもできるけれど、自分流にアレンジするのも自由。「食べるための準備」って、実はすごく人間らしい営みじゃないかという気がするんですよね。

あえて「趣味」ととらえるとしたら、料理ほど喜ばれる趣味ってないんじゃないですか。世の中には「消費する趣味」が多い中で、数少ない「生産する趣味」になるのが料理。結果的に、いろいろとメリットを得られるからおすすめです。

試行錯誤が面白い

――料理が苦手な人が楽しみながら上達するコツはありますか?

シンプルで上達度合いを実感しやすい料理から始めて、たとえば週に1回とか定期的に作ってみるといい気がします。実験と仮説検証を繰り返して、レベルアップする楽しみを知れると思うので。
僕も息子のお弁当にブロッコリーを入れるために、ひたすら実験しましたよ。ブロッコリーをほどよい硬さでおいしく茹でるのって難しいんですよね。

試行錯誤の末、ネットで調べて発見したコツがあって、ブロッコリーを小さい房に切った後に、茎を上にしてフライパンに並べて、フライパンの底に1ミリくらいの少量の水を加えて蓋をして火にかける調理法。水気が飛ぶまでほんの1、2分なのですが、ブロッコリーがふっくらと蒸し上がって上出来になります。スナップエンドウを茹でるときも、どのタイミングで水で冷やすかとか工夫のしがいがありますよ。ぜひ試してみてほしいです。

男性は「ギア好き」も多いので、道具から入るのも手ですよね。僕もその類なので、ピーラーが4種、大根おろしも5、6種揃えてしまいました。ちょっとずつ用途が違うんです。「包丁で切るのが面倒、苦手」という人は、自分の苦手を解消してくれる道具探しから始めてみるといいんじゃないかな。
できないことができるようになる。そんなシンプルな楽しみを、僕も味わっていきたいと思います。

(TEXT:宮本恵理子)

(※)クックパッドは2018年よりGallup社に委託し、料理頻度の世界調査「World Cooking Index」を実施

World Cooking Index
調査概要実施時期:2021年6月11日から8月16日
対象人数:1,007名
実施方法:固定電話もしくは携帯電話を使ったインタビュー
言語:日本語

調査方法の詳細(Methodology)は、こちらからご確認ください。
Cookpad Year 4 Methodology Document

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