徐々に気温も下がりはじめ、冷え性が気になる季節が始まりますね。肌寒い季節に体を温めてくれるのが、ごぼうやにんじんなどの根菜です。食事の一品に根菜料理を加えるだけで、冷えにくい体を作るのに役立ちますよ。
根菜をたっぷり食べられる料理の一つに、「筑前煮」があります。こちらはごぼう、にんじん、れんこん、鶏肉などを醤油や砂糖で煮て作られる、ポピュラーなお惣菜です。筑前煮は、根菜本来の味を保ちながらも、調味料の味を適度にしみこませることが美味しさのポイントです。
今日は、筑前煮を例に、根菜にほどよく味をしみこませる方法について検証してみましょう!
筑前煮における味の染み込みをほどよくするには、根菜を下茹でして炒めておくことが重要です。 一気に強い熱を加えることで根菜の細胞壁が壊れ、細胞内の成分が漏れ出さない程度の隙間ができ、味の染み込みやすい状態が作られるためです。 このため、短い時間で茹でるだけでほどよい味付けの筑前煮が完成します。
一方、何も処理しない状態では、味をしみこませるために長時間煮込む必要があります。しかし、この場合、味は染み込みますが濃くなりがちで、根菜が本来持つ味も流れ落ちてしまいます。
下茹でして炒めてから短時間茹でることで、根菜にほどよく味の染み込み、美味しくなるのです。
最後に、実際どの程度味覚に変化が起こるのかを見てみましょう。 味覚の測定は、食べ物の味覚を数値で表せる味覚センサー「レオ」くんに任せます。
レオを使って、何も処理せず作った筑前煮と、根菜を下茹でして炒めてから作った筑前煮の味覚を分析してみました。その結果、旨味が15%アップし、塩味も8%アップしていました。 下茹でして炒める処理をすることで、調味料と根菜本来の味が一緒になり、旨味を引き出すことができるのです。
ほかにも筑前煮を作るポイントはさまざまにありますが、ひとまず今日は、「根菜は煮る前に処理する」ということを覚えて帰りましょう♪
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。