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コラム

簡単に作れるのに、妙にうれしい特別感。「自家製マヨネーズ」の話

【今日、キッチンで何を考えていますか? Vol.11】旧フランス領インドシナ料理「アンドシノワーズ」として料理教室を主宰する田中あずささん。毎日キッチンですごす時間が長い中、その息抜きは「空き時間の考え事」なのだそう。料理の隙間から生まれた、日々の雑感をおすそわけします。

こんにちは。

私の実家家業は、昭和らしい日本の洋食が得意なレストランでした。昔(私が積極的に厨房を手伝うようになった30年ちょい前のこと)は、今のように便利な調味料やおいしい冷凍食品は少なく、うちのように小さな店ではソースやドレッシングを毎日のように仕込んだことを覚えています。中でも、大きなボウルいっぱいのマヨネーズソースと、マヨネーズを作った後に同じボウルで続けて作る赤みがかった色のフレンチドレッシングは当たり前に冷蔵庫にある基本調味料のような存在でした。

9ea0a5467235f740cc2c6d1fb3d47aeb 当時のマヨネーズを再現。実家ではこの5〜6倍くらいの量は軽く作っていたのでホイッパーを動かすのもひと仕事でしたね。「混ぜる時は、手じゃなくてひざを使うのよ!」と、まるでバスケットボールのシュート練習のようなコツを教えてもらいました(笑)。

自家製のマヨネーズは、今でいうと輸入食材店にあるようなジャーに入って売っているものに味が近いように思います。白っぽくてふんわり、あっさりしており、どこかメレンゲのような軽い食感。手作りだからこそできるシンプルな仕上がりで、いろんな洋食に寄り添いました。サンドイッチのパンにすみずみまで厚塗りしたり、コンビネーションサラダやミックスフライの脇にぽってりと大きく添えたり。

一方で当時の私は、たまに食べる市販のチューブ入りのマヨネーズを、自家製のそれと同じかそれ以上にやたらおいしく感じもしました(笑)。卵黄たっぷりで、ねっとりして塩気が強くてパンチがあって。良い悪いではなく、ウチの手作りとは別のソース、という感じがして、ありがたく頂戴しておりました。

卵黄1個分からできる。実家のマヨネーズレシピ

<材料> (作りやすい分量)
A
・卵黄……1個
・酢……大さじ1
・塩……ふたつまみくらい

・油……180〜200ml(サラダ油でもいいですが、私はグレープシードオイルを使います。マヨネーズはつまり油の料理であるので、くせがなくて質のいいものを使いたい)

・こしょう(粉)、マスタード、おろしにんにく、カレー粉など…お好みで

<作り方>
1.洗ってよく拭きあげたボウルにAを入れ、ホイッパーで白っぽくなるまで混ぜる。

66e24a79fa0c2c45c81da62ed4c37f94 泡立てないよう、ホイッパーの先を常にボウルの底に沿わせるようにして溶くのがポイント。ちなみに、使うホイッパーはワイヤーの数が多いほうがうまくいきます。こちらは12本。

2.1に油を少しずつたらしながら同時に手早く一定の速さで混ぜる。この時も泡立てないよう、ホイッパーの底を常にボウルに沿わせること。

8ce38faac6f957d56a369f18f701c7f5 最初は本当に少しずつ、糸のように油を注ぎながら卵黄、酢と乳化させていきます。ここで分離してしまうと、後からどうがんばっても本当には修正できないので注意。

3.分離せずにソース状にまとまってきたら成功。そのまま好みの固さになるまで油の量を調整する。塩などで味を整える。

油の量は実家では目分量でしたが、レシピに出したところ180〜200mlが妥当。卵黄1個に対して油が200mlを超えてくると、仕上がることは仕上がりますが、保存中に分離しやすくなります。

塩はあとから調整できますが、油分を加えた後は塩が溶けにくくなるので、工程1である程度塩を加えて溶かしておくと味が早くこなれます。こしょうを入れる場合は粗挽きもいいけれど、粉タイプがおすすめです。香りが立ちやすく、舌触りの相性がいいので。

または好みで、おろしにんにくやマスタード、カレー粉やパセリなどを加えてアレンジしてみてください。もちろん茹で卵やピクルス、玉ねぎを加えてタルタルにしても!

マヨネーズが上手にできると妙に嬉しい

さて、レシピをご覧いただくとわかるように、マヨネーズはその材料のほとんどが油です。こんなにシンプルなのに完成され、いろんな料理に欠かせない存在として私たちの食に寄り添うソースって、他にあるでしょうか(うん、あるかもしれない)。

…と、熱弁しておいて何なのですが、実はマヨネーズは私にとって決して「なくてはならない」ソースというわけではないのです。子どもの頃は実家の仕事柄、欲しくなくても家にあったけれど、ひとり暮らしを始めてからの小さな冷蔵庫には、マヨネーズはあったりなかったりする存在でした。さまざまな食の選択肢がある中で、マヨネーズもそのルーティンのひとつだったように思うし、今でもその距離感は変わりません。

ただ、手作りマヨネーズは少量であれば作るのに5分とかからないのにもかかわらず、ちょっと特別感があるところが気に入っています。「近所で売っているものを自分で作る」という感覚は、例えばパン焼きやお菓子づくりに通じるおもしろみがある気がする。

お友達や家族にふるまってもありがたがってくれるし、何より、卵と酢、油でごくシンプルに仕上げたソースは、料理ごとに、アレンジの幅を広くうけとめてくれるところもいいですね。

自家製マヨネーズは、食卓の主役にはならないかもしれないけれど、私にとっては冷蔵庫にあるとうれしくなるソースとして、これからも時折り食卓に登場することでしょう。

アンドシノワーズ 田中あずさ


料理家、コピーライター。
仏印料理教室『アンドシノワーズ』主宰。2006年頃からインドシナ(ラオス・ベトナム・カンボジア3国)の古典料理を研究・紹介。

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