【アメリカの最新ごはん事情vol.4】1989年に渡米し、「セレブ御用達プライベートシェフ」としてアメリカで料理を作り続けてきた明比玲子さんに、日本ではなかなか知ることができないアメリカの食事情を教えてもらいます。第4回目のテーマは「ジンジャーブレッド」。スターバックスでもクリスマスシーズンになるとジンジャーブレッドラテが発売されるなど、日本でも身近なスイーツになり始めています。
日本では、クリスマスに欠かせないものといえば、「クリスマスケーキ」ではないでしょうか。アメリカでは、「クッキーがなければホリデーシーズンは始まらない」と言われるぐらい、クッキーはクリスマスにはなくてはならないものなのです。
12月になると親しい友人の間で、手持ちレシピがマンネリ化しないように、クッキーレシピの交換をしたりもします。ブッシュ・ド・ノエルを売り出すベーカリーもありますが、日本ほどの人気はありません。
クリスマスシーズンは、家族、友人と集まり一緒に時間を分かち合い、楽しいひとときを過ごすもの。スイーツを持ち寄ったり、プレゼントをするのには、ケーキよりクッキーの方が簡単。さらに、長く常温保存ができるというのも、クッキーが好まれる理由です。
小さい子どものいる家庭では、クリスマスイブに寝る前、サンタさんに労いの意味を込めて「クッキーとミルクを置いておく」というのも風習の1つです。ちなみに、このクッキーはアメリカ人が1番好きな「チョコレートチップクッキー」がほとんど。アメリカ人はいくつになってもチョコレートチップクッキーとミルク、このコンビネーションをこよなく愛しています。
ホリデーシーズンに作るクッキーに特に決まりはなく、自分の好きなものを焼きますが、今回はその中でも1番クリスマスらしい「ジンジャーブレッドマン」をご紹介します。
「ジンジャーブレッドマン」とは、人の形に型抜かれたジンジャースパイスクッキーのこと。起源はいくつか説がありますが、アメリカには17世紀前半に移民のオランダ人によって紹介されたと言われています。
食べてみると、ジンジャーブレッドという割には、ジンジャーよりもスパイスが全般に効いているレシピの方が多いと思われます。よって、スパイスが苦手な方は、ジンジャーを多めに入れ、他のスパイスを少なめにされるといいでしょう。
<材料> (7.5cmのジンジャーブレッドマン約23枚分)
・バター (室温)......60g
・ブラウンシュガー......50g
・モラセス(※1) ......60g
・オレンジの皮のすりおろし(※2)......小さじ1/4
・薄力粉......135g
・ベーキングソーダ......小さじ1/4
・ジンジャーパウダー......小さじ1
<スパイス>
シナモンパウダー......小さじ1/2
クローブパウダー......ふたつまみ
ナツメグパウダー......ふたつまみ
カルダモンパウダー(※2)......ふたつまみ
※1 「モラセス」とは、砂糖をつくる際に原料のサトウキビなどから除去される糖蜜のこと。ない場合ははちみつでも代用OK
※2 あった方が味はいいですが、なくてもOK
<作り方>
1.室温に戻したバターとブラウンシュガーをよく混ぜ合わせて、モラセスも入れてよく混ぜる
2.スパイス、薄力粉、ベーキングソーダをふるいにかける
3. 1にオレンジの皮のすりおろしを入れて混ぜて、そこに2を入れて混ぜ合わせる
4.生地をまとめて、30分ほど冷蔵庫で寝かせる
5.生地を綿棒で5mmぐらいの厚さに伸ばして、型抜きをしていく
6.クッキングシートを敷いた天板に5をのせて、あらかじめ180℃に温めたオーブンで12〜14分焼く
7.オーブンから出したあと、天板の上でクッキーを冷ます
8.完全に冷めてから、アイシングをする
9.アイシングをしたら、半日以上は乾かしてから密閉容器に入れる
アイシングを作る時の注意点は、固さです。卵白の量は卵によって微妙に違うので、分量の粉砂糖を一気に混ぜてしまわず、最初に半分混ぜて、その後は少しずつ混ぜていきましょう。柔らかくし過ぎてしまうと、アイシングが流れてしまうので、気をつけましょう。
下記のアイシングレシピの分量を3つに分けると、3色に分けられて、クッキーレシピの焼き上がり枚数にも十分な量となっています。
<材料>
・卵白......1個分
・粉砂糖.....180g
・バニラエッセンス......小さじ1/4
<作り方>
1.卵白を少し泡立つぐらいまで泡立てる
2.粉砂糖をよくふるっておく
3.1にバニラエッセンスを加える
4.1に2の半分ほどを入れてよく混ぜ合わせたら、残りの粉砂糖も混ぜ合わせる。色をつけたければ、ここで色をつける。もし固くなり過ぎたら、レモン汁か水を1滴ずつ加えていき、柔らかくなり過ぎないように調整する
ジンジャーブレッドマンは、焼く前に頭の所にリボンが通せるぐらいの穴を開けておけば、ツリーのデコレーションにもなり、自分だけのオリジナルのツリーが作れます。
クッキーをプレゼントしたり、持ち寄って食べるのも楽しみですが、小さな子どものいるご家庭では、型抜きをしてアイシングでデコレーションをするというのも、ホリデーシーズンの楽しみの1つですね。
このクッキーは卵が入っていないので、アイシングをしなければ卵アレルギーの人も食べられる一品です。密閉した容器で3週間ほど日持ちがするので、今年は是非、ご家庭で作ってみられてはいかがでしょうか?
兵庫県芦屋市生まれ。1989年に渡米し、ニューヨークのシェフ養成学校で学んだ後、本格的に料理に取り組む。著名レストランでパティシェとして経験を積み、アメリカ人と日本人に料理とお菓子の指導も行う。日本の料理雑誌への寄稿やフードスタイリングも行いつつ、2008年からは、コンサルティングの仕事なども兼ねながら、ニューヨークセレブのプライベートシェフとして、活躍中。