cookpad news
コラム

サラダチキンの台頭、から揚げ人気…これで流行らないわけがない!?新注目の「チキンバーガー」に迫る

阿古真理

作家・生活史研究家。食や食らし領域が専門。

コロナ禍の影響で、チキンバーガー専門店が登場

今、巷で「チキンバーガー」が流行中という。それは2021年に続々と、外食企業がチキンバーガー専門店を開いたことがきっかけだ。まず、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」が2021年5月に武蔵小山で「ラッキーロッキーチキン」1号店を、1人焼き肉の「焼き肉ライク」を展開するダイニングイノベーショングループが7月、「ドゥーワップ」1号店を代官山で、焼き鳥メインの居酒屋チェーン「鳥貴族」を展開する鳥貴族ホールディングスが8月に、大井町で「トリキバーガー」1号店を、10月に「からあげグランプリ」で5年連続金賞を取った居酒屋「からあげバルハイカラ」が、「ハイカラ・フライドチキン」を秋葉原に開店。

個人店もあるのか、とインターネットで検索してみたが、今のところハンバーガー店でチキンバーガーがある、という状態で専門店はまだないようだ。

しかし、チキンバーガーが流行、と言われると、「なるほど、そうきたか!」と流行の要因はすぐに思い当たる。開業は皆2021年。4つのチェーンのうち3つが居酒屋を経営する。居酒屋と言えば、コロナ禍に入って最も経営が厳しくなった飲食業だ。特に2021年は9月までのほとんどの時期が緊急事態宣言下という異常事態で、夜の飲食店営業は大幅に制限された。日中に販売できテイクアウトできるハンバーガーは、確かに魅力的な商品と言える。

もともとハンバーガーは、2000年代初頭にグルメバーガーが流行し始めてから、新たな層を開拓し人気が再燃した料理である。グルメバーガー店を集めたムック本が出る、グルメバーガーを題材にしたマンガ『本日のバーガー』(漫画:才谷ウメタロウ、原作:花形怜、芳文社)が2016年に発売、2020年にはドラマシリーズ『ドラマ25 女子グルメバーガー部』(テレビ東京系)が放送される、と注目度も高い。1個千数百円とファストフードの何倍もするにもかかわらず、バンズやパテがおいしい、味つけや具材のバリエーションが楽しい、と人気を維持している。

ここ十数年、鶏肉が人気なのはなぜ?

鶏肉も近年、流行の食材と言える。2009年以降、から揚げの本場、大分のチェーン店が続々と東京に上陸し、2010年代前半にはから揚げ専門店ブームが起こった。今はすっかり、テイクアウト店の定番になっている。

2017年には、脂肪が少なくヘルシー、と鶏むね肉がスーパーで割高になるほど大流行し、ぐるなび総研が選ぶ「今年の一皿」に鶏むね肉が取り上げられた。流行のきっかけは、どうやらコンビニでサラダチキンを扱い始めたこと。

『日経トレンディネット』2017年11月24日の記事によれば、サラダチキンを開発したのは、岩手県大船渡市の鶏肉の生産・加工を手掛けるアマタケで、2001年からスーパーで販売してきた。2014年に皮を取ったことから大人気に。2013年にはセブン‐イレブンがサラダチキンの販売を始めて人気があったことから、2016年にはローソンがアマタケから仕入れる、他のコンビニからもアマタケにオファーが来る、と広がったのである。今は落ち着いているものの、プロテインダイエットの流行もあり、サラダチキンの人気は継続している。

その後、第3次韓流ブームの影響で、ヤンニョムチキンやサムゲタンといった韓国鶏肉料理が流行。インド料理のバターチキンも人気だ。つまり、各方面で鶏肉は人気が高まっているのである

実は日本人に馴染み深い「チキンカツ」

これだけのベースがあるのだから、鶏むね肉のカツを挟んだチキンバーガーがヒットしないわけがない。何しろ鶏肉は、肉食を禁じてきた時代にも食べられてきて、日本人にとってなじみ深い。焼き鳥もから揚げも鶏の水炊きも、日本生まれの料理である。そして、他の肉より割安でカロリーも少なめ。ついでに言えば、豚や牛よりえさの量が少なくて済むことなどから、SDGsの観点からも環境負荷が少なめ。アメリカではこうした特徴が注目され、牛肉から鶏肉へと肉の人気がシフトしている。チキンサンドも流行中だ。

西洋料理が入ってきた明治時代、カツの代表はとんかつではなかった。豚肉は「くさい」と敬遠されがちで、普及し始めたのは、軍隊が牛肉を大量消費し市場に出回りにくくなった日清日露の戦争以降である。それまでは、カツの代表は牛カツで、チキンカツも牛カツと並んで人気が高かった

実は私も、とんかつよりチキンカツが好みである。とんかつはヒレよりロースが好みだが、それはヒレがパサパサした店が多いから。本当は脂身が少なめの方がありがたい。その点、鶏むね肉を使ったチキンカツは間違いなくさっぱり目。しかし、とんかつ専門店では見かけない。よくメニューにあるのは、洋食屋だろうか。しかし洋食屋に行くと、いろいろ目移りしてしまうので、めったにチキンカツを注文しない。

とんかつは、高校時代に週の半分ほど夕食当番をしていたので、よく作った。しかし、1人暮らしになると持て余すし、2人になっても持て余し気味なうえ、キッチンの調理台が狭い部屋に住んできたので作ろうと思わなかった。去年の秋にキッチンが広い部屋に引っ越して初めて、チキンカツを作ってみる気になる。鶏むね肉をスライスして二つに分け、塩コショウを振ってから、小麦粉、卵、パン粉の順にしっかりとまぶしていく。パン粉にはパルメザンチーズを混ぜ込んだ。しばらく置き、中温に熱したフライパンの菜種油に入れて揚げ焼きにしていく。

きつね色に揚がったら、バットに取ってしばらく置き、包丁で食べやすい大きさに切ってから、キャベツの千切りを盛った皿に載せる。鶏むね肉は、ゆでる場合は温度管理に失敗して固くなることがあるが、カツは一定の温度で火を通せるので、しっとり柔らかに仕上がった。このチキンカツを、パンと野菜で挟んだら、おいしいこと間違いなし!

残念ながら今のところ、ラッキーロッキーチキンは現在5店、トリキバーガーは2店、ドゥーワップとハイカラ・フライドチキンは各1店と、チキンバーガー専門店は東京の都心中心に少ししかない。既存のハンバーガー専門店で食べるか、自作するのが、手軽に食べる方法と言えそうだ。

画像提供:Adobe Stock

阿古真理(あこ・まり)

©植田真紗美
1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、『母と娘はなぜ対立するのか』、『平成・令和食ブーム総ざらい』、『日本外食全史』、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』、『ラクしておいしい令和のごはん革命』など。

執筆者情報

阿古真理

作家・生活史研究家。1968年、兵庫県生まれ。食や暮らし、女性の生き方を中心に生活史と現在のトレンドを執筆する。主な著書に『大胆推理!ケンミン食のなぜ』・『家事は大変って気づきましたか?』(共に亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)、『日本外食全史』(亜紀書房)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『料理は女の義務ですか』・『小林カツ代と栗原はるみ』(共に新潮新書)など。

阿古真理さんの理想のキッチンに関するプロジェクトはご自身のnoteやYoutubeでもコンテンツを更新中です。

関連する記事
一体なぜ?香港のドンキで日本の「たまご」が爆売れする理由 2023年11月01日 18:00
「きのう何食べた?」にも登場。庶民の味方「のり弁」が高級化した理由 2023年10月31日 19:00
冷蔵庫にある「焼肉のたれ」で!鶏むね肉のボリュームおかず3選 2023年10月31日 12:00
和風のイメージを覆す!?進化系「揚げ出し豆腐」 2023年11月05日 10:00
おうちで韓国料理!甘辛×とろ〜り濃厚チーズの最強タッグ「チェゴチキン」 2023年11月17日 19:00
もも肉がジューシー!焼き方にワザあり「鶏のねぎ塩だれ」レシピ 2023年11月19日 15:00
カルディ行くならこれ買って!節約家がおすすめするコスパ良すぎ食材 2023年11月17日 20:00
今は「クセつよ」が人気。チーズケーキが日本人に愛されるようになったきっかけ 2023年11月28日 19:00
パクパク止まらない!うますぎる「手羽先おかず」2選 2023年11月01日 21:00
コスパ抜群!やわらかジューシー「鶏むね肉」の作りおきおかず 2023年11月18日 19:00
生春巻きだけじゃない!「ライスペーパー」がSNSで大バズりした理由とは? 2023年11月29日 04:00
2023年春の物価高騰…苦境の中で驚きの「卵なし」レシピが爆誕! 2023年11月29日 04:00
昨年の食トレンド予測から見事、入選!なんでも使える「米粉」が大ヒット 2023年11月29日 04:00
脳がバグる不思議な感覚!SNSで話題の「2Dケーキ」って知ってる? 2023年11月29日 04:00
1個600円以上!パリで日本のおにぎりが大ブーム。人気の理由は? 2023年11月29日 04:00
新感覚のスイーツに変身!2024年大注目の野菜は「とうもろこし」 2023年11月29日 04:00
大手コーヒーチェーンにも登場。大人かわいい「モノクロスイーツ」 2023年11月29日 04:00
Z世代からブームが広がりそう。ヘルシーにお腹を満たす最新の健康食「アジアン粥」 2023年11月29日 04:00
本場イギリスでは食べ方で論争が勃発!奥深い「英国式スコーン」の世界 2023年11月29日 04:00
マニアが食べ比べ!業スーで1番おいしい「スパム缶」はコレだ 2023年12月15日 20:00
渋谷からブームに!若者たちに「いちご飴」が人気の理由 2023年12月27日 19:00
700人が絶賛!ポリ袋で手間なく作れる「軟骨のから揚げ」 2023年11月29日 21:00
ブームの予感「アジアン粥」を簡単に!ご飯&サラダチキンで作る楽々レシピ 2023年12月09日 17:00
こんなケーキ見たことない⁉︎市販品で意外と簡単「モノクロブッシュドノエル」 2023年12月14日 12:00
ライスペーパーでシャリサクッ!の新食感「鶏胸肉の唐揚げ」をクリスマスに 2023年12月21日 12:00
新感覚すぎる!カルディの大人気「おにぎり」実食レポ 2024年01月31日 19:00
ガッツリ濃厚「悪魔の鶏塩キャベツ丼」がウマすぎる 2024年01月08日 10:00
もう食べた?SNSで大人気「じゃがアリゴ」絶品レシピ 2024年01月16日 10:00
子ども喜ぶ◎焼肉のタレで味決まる「チーズチキン照り焼き」が絶品 2024年01月26日 08:00
フルコース料理に進化!?日本のとんかつが外国人旅行者に人気の理由 2024年01月31日 20:00
編集部スタッフが憧れの「七面鳥の丸焼き」に挑戦!「コストコ」の人気食材で激うまアレンジレシピも爆誕 2023年12月03日 20:00
鶏むね肉1枚で家族分!ほったらかしで簡単「鶏チャーシュー」 2024年02月06日 08:00
フライパンよりラク!魚焼きグリルで作る、皮パリパリ鶏肉おかず 2024年03月01日 08:00
これやりがち…倹約家FPが教える「実はコスパが悪い」節約術3選 2024年02月09日 20:00
専門店が続々登場!定番の「おにぎり」がブームになった理由 2024年02月21日 19:00
鶏むね肉で作る「ごまテリチキン」が柔らかくて美味! 2024年02月22日 16:00
【殿堂入り】クックパッドで人気!箸が止まらない「鶏ささみのカリカリから揚げ」 2024年02月19日 12:00
まるでカロリー爆弾!アメリカ人が愛するちょっと変わった◯◯ピザって知ってる? 2024年02月29日 13:00
一番人気はちくわの◯◯!北海道民に愛されるコンビニ「セイコーマート」でみんなが何を買っているか現地調査してみた 2024年01月12日 21:00
アニメ好きやヴィーガンに大人気!日本のおにぎりがパリで独自進化していた 2024年01月15日 09:30
しっかり味でご飯がすすむ!味噌×鶏肉のメインおかず 2024年03月29日 08:00
スパイスカレー、生クリームがてんこ盛り…東京でうどんが独自の変化を遂げていた 2024年03月23日 16:00
家族が鶏むねって気づかない⁉️やわらかすぎる「から揚げ」の作り方 2024年04月02日 10:00
鶏むね1枚で4人分!家族大満足のふわふわ「チキンナゲット」 2024年04月22日 16:00
夏に向けてブームの予感!いちご飴が進化した新感覚スイーツ「アイスタンフル」って? 2024年04月05日 05:00
英国のスコーンが進化!SNSで人気のかわいすぎる「韓国風スコーン」 2024年04月05日 05:00
クリームチーズのような濃厚さ!美容系インフルエンサーが注目の「グリークヨーグルト」 2024年04月05日 05:00
“ぶっ潰す”のが楽しい!カリカリ食感の「スマッシュドポテト」が欧米で人気 2024年04月05日 05:00
“キャロ活”って知ってる?大ブーム目前のスイーツ「キャロットケーキ」 2024年04月05日 05:00