早いもので今年ももう12月。クリスマスももうすぐです。家族や親しい人たちとごちそうを囲む会を楽しみにしている人も多いのでは?
クリスマスに欠かせないごちそうと言えば、鶏肉料理。ローストチキンなど鶏肉を調理する機会が多くなると思いますが、気をつけたいのが、鶏肉が原因で発生することが多い「カンピロバクター食中毒」です。また食中毒の発生件数としてはカンピロバクターによるものが最も多く、患者数が一番多いのはノロウイルスによるものです。いずれも正しく知っておけば多くは予防できる食中毒です。
カンピロバクターは、おもに動物の腸管内に生息しています。「酸素が少量含まれる環境で初めて発育でき、乾燥状態では増殖できない」「少量の菌でも発症することがある」「加熱には弱い」などという特徴があります。
また、カンピロバクターは牛や豚などにも存在しますが、特に鶏肉は、カンピロバクターに汚染されていることが少なくありません。市販の鶏肉からカンピロバクターが20~100%の高い割合で見つかったという報告もあります。
また牛や豚は生食が禁じられているのに対し、鶏肉には規制がないので、鶏刺し、鶏わさやたたきなど生または生に近い状態で提供する店もあるのが現状です。「新鮮だから安心」ということはなく、カンピロバクターによる食中毒の発生は飲食店が圧倒的に多くなっています。
発育する温度域が約30〜46℃と高いので、食品中で増えることはあまりありませんし、しっかり加熱すれば死滅させることができます。生食を避け、調理の際は不十分な加熱とならないようにしてください。鶏肉は組織がやわらかいので、表面に付着した菌が内部にも入り込むことがあります。中までしっかり白っぽくなるくらい=赤い部分がない状態まで加熱することが目安です。表面だけを加熱する「湯引き」程度では中に潜んでいる菌は死滅しません。
最も注意が必要なのは、生の鶏肉に付着している菌が調理器具や手指に付着して、他の食材に付いてしまう「二次汚染」です。
菌が付着した鶏肉をまな板にのせて切ったとき、まな板や包丁、直接鶏肉に触れた手にも菌が付着します。それらをしっかり洗わずに別の食材を切ったり触ったりすれば、菌はどんどんあちこちに拡散されることになります。
たとえばクリスマスの鶏肉料理に生野菜のサラダを添えることも多いと思いますが、鶏肉は充分に加熱して大丈夫だったとしても、サラダの方が原因になる可能性もあるということです。また、おせち料理もお雑煮やいり鶏などの鶏料理と、なますや菊花かぶなどを作ることもあるでしょう。加熱しない料理は先に作ってしまうなど、同時平行を避ける段取りが必要です。使った調理器具はその都度よく洗う、手洗いはこまめにする、ということを忘れないでください。包丁、まな板に限らず、菜箸やざる、ボウルなども同様です。
焼き肉をするときに、肉を取る箸と食べる箸を分けないなどといったこともNGです。前述の通り、カンピロバクターは菌の数が少なくても発症する可能性があるので、気をつけましょう。
調理中だけでなく、鶏肉を冷蔵庫で保存するときも、パックのドリップが他の食品に付着したりすることのないように、ほかの食材とはしっかり分けて入れるとよいでしょう。
カンピロバクター食中毒の主な症状は、発熱、頭痛、倦怠感、下痢、腹痛などです。潜伏期間が長いので、原因食品を食べてから2〜5日経って発症することもあります。症状がさまざまなので初期は風邪などと間違えることもあります。
また、カンピロバクター食中毒は、難病として知られるギラン・バレー症候群の原因ともなり得ることが明らかになっています。ギラン・バレー症候群のおよそ10〜30%が、カンピロバクター食中毒を2~3週前に発症しているとの報告もあります。食中毒を疑ったときは、念のため医師の診察を受けることをおすすめします。
クリスマスのほか、年始のおせち料理など、鶏肉を調理する機会が増える季節です。カンピロバクター食中毒は、しっかりとした知識を身につけて、適切に対処すれば防ぐことができます。毎日のごはん作りはもちろん、年末年始の特別な食事もおいしく、楽しく!
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