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コラム

【卵だけじゃない!?】春のお祭り「イースター」、世界の家庭では何食べている?

【世界の台所探検 Vol.31】世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さん。今回は、春のお祭り「イースター」の世界各地の様子を紹介します。

ところで、イースターって何?

日本では新学期と春の訪れとでなんだか軽やかな気持ちになるこの時期、ヨーロッパの街もうきうきした空気に包まれます。その理由は『イースター』です。

イースターとは、イエス・キリストの復活を祝うと同時に、春の訪れを祝うお祭り。キリスト教徒の多いヨーロッパの国々では、2週間のイースター休暇があったり、イースターマーケットが開かれたりと、街全体がいつもと違った装いになります。

日本でもイースターの時期の3〜4月頃になると、パステルカラーの卵を時々見かけるようになりましたね。卵がイースターの行事には多用されるのは、生誕のシンボルであるからなのだそうですよ。

ですが、ただ卵を飾ったりゆで卵を食べるだけではありません。ここからは、世界各地イースターの食卓を、ちょっと覗いてみましょう。

ブルガリアは「バターと卵たっぷりのパン」

どんな食事にもパンが欠かせないブルガリア。普段食べるのはシンプルな白いパンですが、イースターの食卓には「コズナック」という特別なパンを作ります。

生地には卵と砂糖とバターをたっぷり使い、ブリオッシュのように甘い風味。三つ編みのようにして仕上げるのも特徴で、材料も手間もかかるリッチなパンです。パンが発酵して膨らむ様子が復活・生誕を想起させるのだともいう説もあります。

Photo by Nelly Koleva

その傍に飾られるのは、美しくペイントされたイースターエッグ。中身を抜いた卵の殻に、蜜蝋や染料を使って模様を描きます。「地域によっていろいろな柄があるのよ。たくさん描くから、この時期になると卵の中身がたくさん余るのよね...」とエッグペインティング名人のお母さんが教えてくれました。

コズナックの生地が卵たっぷりでリッチなのは、ひょっとしてイースターエッグ作りのために卵の中身がたくさん余るからなのでしょうか!?

ウクライナは「巨大なチーズケーキ」

「イースターといったら、パスカかチーズパスカ。どっちも手間がかかるけれど、チーズパスかの方がちょっとだけ楽かな、ちょっとだけ」と教えてくれたのはウクライナに住む一家。

パスカは、ブルガリアのコズナックに似たパン。チーズパスカというのは、一言で言うならば「巨大なレアチーズケーキ」。フレッシュチーズに卵黄や砂糖や生クリーム、それにドライフルーツを混ぜたものを型に注ぎ、押し固めます。こちらも乳製品と卵をたっぷり使うリッチな味わいのデザートで、そのサイズ感たるや、人が集まる時ならではです。

チーズパスカを食べながら人々が楽しむのは、"エッグハント"ならぬ"エッグファイト"。「他の国では卵を隠して探すみたいだけど、ウクライナではぶつけて戦うんだ。ゆで卵を二人で一つずつ持って、尖った部分をぶつけ合わせて、凹んだ方が負け」。家族や親戚が集まってやるから、気づくと山のようにゆで卵がたまるのだとか。

フランスは「魚の形のチョコレート」

イースターの時期にヨーロッパの街を歩くと、卵型のチョコや、卵を運んでくると信じられているうさぎをかたどったチョコがあちらこちらのショーウィンドウに並んでいます。

「イースターと言ったら卵」、そう思い込んでいたら、フランスでやすやすとそのイメージはひっくり返されました。

「はい、イースターの贈り物だよ」とパリに住む老夫婦に手渡されたのは、魚をかたどったリアルなチョコレート。正直、卵やうさぎのように可愛いという訳でもなく、「これは何なんだろう...」と戸惑いました。

後で知ったことなのですが、魚はギリシャ語でイクテゥスと言い、「イエス・キリスト・ 神の・ 子・ 救い主」の頭文字を並べたものと一致することから、キリストを象徴するシンボルとして大切にされてきたのだそうです。

世界の料理を作って、イースターを楽しもう!

イースター休暇は、離れて暮らす家族のもとで過ごしたり、普段会わない親戚とも会える時期。大きなパンやお菓子を作るのも、プレゼントを贈り合うのも、そういう時期だからなのかもしれません。

春の訪れになんだかうれしくなる気持ちは、キリスト教徒に限らず感じるものではないでしょうか。いつもより少しリッチな料理で、ちょっと違った春を楽しんでみませんか?

岡根谷実里さん

台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
著書に 「世界の台所探検 料理から暮らしと社会が見える(青幻舎 )」がある。

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