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コラム

食中毒になる恐れも!お肉の「生焼け」、どうしたら防げる?

食中毒が気になる季節。原因となる食べものはさまざまで、肉による食中毒も少なくありません。肉による食中毒の多くは、生または加熱が不十分な肉を食べたことが原因となります。どうして生や加熱が不十分な肉で食中毒になってしまうのか、予防するにはどうしたらよいかをしっかり知っておきましょう。

そもそもどうして「生」はいけないの?

2012年7月から牛レバー、2015年6月からは豚の肉や内臓を生食用として販売、提供することが禁止されました。なぜこうした規制ができたのでしょうか。

毎日のごはん作りによく使われる牛や豚や鶏、また最近人気のジビエ(いのししや鹿など)の腸内などには、食中毒の原因となる細菌(O157などの腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど)が存在しています。解体処理をする過程で、それらが肉や他の内臓に付着し、食中毒の原因になるのです。

また、それらの細菌はレバー等内部まで入り込んでいることもあるので、現段階で生の状態で完全に除去しきれないと判断され、牛のレバーや豚の肉(内臓を含む)を生食用として販売することを禁止しました。現在売っているものはすべて「加熱用」です。牛肉(内臓を除く)に関しても、生食用の販売には厳格な基準が設けられました。

いずれにしても、肉を生で食べると食中毒のリスクがとても高くなります。さらに、細菌だけでなく、健康被害をもたらすE型肝炎ウイルスや寄生虫などに感染している可能性もあります。「生」がいけないのはこうした理由からです。

子どもやお年寄りは特に注意を

肉の種類によって、注意すべき細菌やウイルスの種類が違います。主なものをあげてみましょう。

牛肉

腸管出血性大腸菌(O157など)、サルモネラ菌 など

豚肉

サルモネラ菌、E型肝炎ウイルス 有鉤条虫など

鶏肉

カンピロバクター、サルモネラ菌 など

ジビエ(いのしし、鹿など)

E型肝炎ウイルス、寄生虫 など

「腸管出血性大腸菌」は、潜伏期間3〜5日、発熱や腹痛、下痢などが主な症状です。重症化することもあり、脳症などの合併症を起こすこともあります。「サルモネラ菌」は潜伏期間8〜48時間、嘔吐、腹痛、下痢を引き起こします。牛肉だけでなく、さまざまな肉に広く存在します。

「カンピロバクター」は鶏をはじめ、豚や牛にも存在する菌で、潜伏期間は2〜5日、下痢、腹痛、発熱、嘔吐を起こします。重症化すると脱水症状を引き起こすことも。難病のギラン・バレー症候群の原因のひとつとなることもわかっています。豚肉やジビエなどに多いのが「E型肝炎ウイルス」で、特に妊婦がかかると重症化する割合が高くなります。

感染しても、健康な成人であれば軽い症状で済むこともあります。しかし抵抗力の弱い子どもたちやお年寄り、妊娠している人などは重症化することがありますので、より気をつけなければなりません。2011年に起こった牛肉の「ユッケ」による食中毒では、患者数は181名、そのうち5名(うち3名が14歳以下)が亡くなりました。  

肉の食中毒の予防は「しっかり加熱」

こうした細菌による食中毒予防の大きなポイントは、「しっかり加熱すること」です。「肉はいつも焼いて食べているから大丈夫」と考える人もいると思いますが、中までしっかり加熱されていない「生焼け」の状態だと細菌はまだ生きている可能性があるので、安心はできません。

菌を死滅させるには、多くの細菌の場合、中心部まで75℃1分間以上の加熱が目安となります。または、ローストビーフなどを調理するときには、中心部まで63℃30分間以上で加熱すれば菌を死滅させることができます。

家庭では実際に温度を測るのは難しいと思いますが、豚肉や鶏肉、レバーなどは目で見て、赤い部分がなくなっていることを確認しながら調理するとよいでしょう。

なお、ひき肉は動物の種類に関わらず、細かくする分、表面についていた細菌が内部に入り込みやすくなります。たとえば、ひき肉をまとめて作るハンバーグなどは生焼けにはより一層の注意が必要となります。ふたをして蒸し焼きにするなど、完全に色が変わり、肉汁が透明になるまでしっかり焼くことが大切です。

サイコロステーキ用の肉や、調味液で漬け込んだ肉などの加工肉も病原微生物による汚染が内部に拡大する可能性が高く、注意が必要です。

暮らしの中でも気をつけたいことがたくさん

これから気温がどんどん上がる季節ですので、菌を増やさないという工夫も大切です。たとえば、買いものに行ったときも、肉類は最後に買うようにしましょう。保冷剤、保冷バッグを活用して、寄り道をせずに帰り、帰ったら早めに冷蔵庫に入れるということも菌を増やさないためには大切です。

調理開始前はもちろん、調理中もこまめな手洗いを心がけてください。肉をさわった手で蛇口や鍋のふたなどに触れると、菌が移ってしまう可能性があります。そこに再び触れたとき、せっかく手をきれいにしていても、菌が付着してしまうのです。その手で調理すると、食材に菌が移る原因になります

同様に、肉を切った包丁やまな板で他の食材を切ると、付着した菌が他の食材に移ることもあるので、肉を切ったらすぐによく洗うことも習慣づけたいものです。

また、屋外でのバーベキューなどが楽しい季節を迎えますが、バーベキュー時の食中毒も少なくありません。冷蔵庫がないことに加え、準備に時間がかかりがちで菌が繁殖しやすい環境にさらされるためです。さらに串焼きや焼鳥のようなメニューは、特に火加減が難しく、表面だけが焼けた状態で火が通っていると思い込み、生焼けで食べてしまいがちだからです。

中心部までしっかり加熱するのはもちろん、肉は購入時から焼くときまで、低温(10℃以下)で保存する、包丁やまな板を清潔に保つ、生肉をさわった手で他のものをさわらない、生肉を扱ったトングや箸で他の食材をさわらない、食べるときに使わないなど、注意しましょう。特に子どもが多いときはよく気をつけて下さい。

正しい肉の扱いや調理方法を知って、これからの行楽シーズンを安心して楽しみましょう。

監修:公益社団法人日本食品衛生協会

飲食物が原因となって起こる食中毒などの健康被害を防止し、消費者の健康を守るため、食品等事業者に正しい食品衛生の知識を広めることを目的として、地域の保健所や食品製造業や飲食店等の人々と協力し、 食の安全を守るための活動を行っています。
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