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コラム

ビアジャーナリストに聞く!自宅で最高においしい「ビール」を飲む方法

暑い日の楽しみと言えば、キンキンに冷えたビールですよね! おうちで長く過ごすことがもうしばらく続きそうなこの夏、自宅でおいしいビールを楽しむ方法を、ビアジャーナリストの松原順子さんに聞いてみました。

ビールは“生き物”なんです!

――今年の夏もおうちでビールを楽しむ時間が増えそうです。そこで、自宅でビールを楽しむときに気をつけたいポイントを教えてください。

キンキンに冷えたビールがおいしい季節ですよね! おうちでビールを楽しむ場合は、必ず前もって冷やしておいたビールを冷蔵庫から取り出して飲んでいただきたいです。

――前もって冷やしておくというのは、飲むどのくらい前から冷やしておくべきなのでしょうか。

冷えているということも、もちろん大事ですが、ここで言う「前もって冷やす」というのは、冷え具合のことを気にしているわけではありません。例えば、ビールがなければお店で冷えたビールを買ってすぐに飲むと思いますが、実は、それはあまりよくないんです。

買ってきたばかりのビールは、どんなにそーっと持って帰っていたとしても、“炭酸が揺れている状態”。この状態で注ぐと、本位ではない泡立ち方をして、ビールの味に影響することがあります。揺れを落ち着かせるために、少なくとも1時間は冷蔵庫で落ち着かせてから飲むのが理想です。

ビールはとても繊細で、まるで生き物のよう! 買ったら大事に連れて帰り、冷蔵庫でしっかり冷やしてから飲んでいただきたいです。

――なるほど。ビールは生き物! 名言ですね。グラスに注ぐとき、泡とビールの比率や理想的な注ぎ方はありますか?

泡を少し立てたくらいの状態で、ビールと泡が7:3となるのが黄金比率です。海外では泡を立てないこともありますが、日本ではこの注ぎ方が好まれますね。

――黄金比になる注ぎ方のポイントを教えてください。

グラスを手前に45℃傾けて、ビールをコップの側面に沿わせて注いでください。この注ぎ方で概ね7:3の黄金比になります。

――缶のまま飲む人もいますが、グラスに注いで飲むのと缶で飲むのでは違いはあるのでしょうか?

メーカーはグラスに注ぐことを考慮して炭酸の強さを調整しているので、グラスで飲む状態がベストだと思います。私もいろいろな飲み方をしてきましたが、グラスにちゃんと注いで飲むのが1番好きです。泡があったほうがビールとしての完成度が上がるのはもちろんですが、泡はビールの中から苦みを吸い出すという働きをします。苦みを吸って、さらに蓋の役割となってビールの酸化を遅らせてくれるんですよ。

銘柄によって、おいしく飲めるグラスの形は違う!

――グラスに注いだほうがおいしいということですが、ビールに適したグラスの形というのはあるのでしょうか。

よくぞ聞いてくれました! ビールをおいしく飲むためにはグラスの選定もすごく大切。スーパーなどで売られているビールに、グラスのおまけがついているのを見かけたことはありませんか? そのグラスこそが、その銘柄のビールのおいしさを引き出すのに最適な形のグラスなんです。お好みのビールがあったら、ぜひおまけのグラスがついているのを探してみてください。

――銘柄によっておいしく飲めるグラスが違うんですね! お店でもさまざまな形状のグラスでビールが出てくるのは、そういった理由なんですね。

世界にはビール用のグラスがたくさんあります。例えば、ベルギービールは醸造所別に、その銘柄だけのグラスが決まっています。そのくらい、グラスとビールというのは密接な関わりがあるんですよ。

日本の居酒屋で多く飲まれているピルスナータイプのビールには、喉越しが楽しめる真っ直ぐなグラスが合うんです。なのでジョッキが多いですよね。香り豊かなビールの場合は、内側に香りのたまるワイングラスのような形状がおすすめです。

私がMCを務めるYoutubeチャンネル「JBJAchannel」でも、グラス別の飲み比べを実施しており、イメージがわくかと思います。

作り手の顔と技が見えるクラフトビールの魅力

――昨今、「クラフトビール」というものを多く見かけるようになりましたが、そもそも「クラフトビール」とは何でしょうか。

クラフトビールとは、本来「職人技のビール」「手作りのビール」を意味しています。日本では、大手のビールメーカー以降にできたメーカーが作ったものをクラフトビールと呼んでいることが多かったのですが、最近は、大手メーカーも「これぞ、クラフト!」と銘打ったビールを発売したりしています。つまり、「クラフトビールとは」という明確な定義がないんです。なので、この質問は、私たちビアジャーナリストも困ってしまうものなんですが、私個人の定義としては、作り手の顔と技が見えるビールをクラフトと呼びたいと思っています。

――作り手の顔と技が見えるというのは、飲む側も味以外の部分でも楽しみがありますよね。

そうなんです。消費者というより“飲み手”という立場でいられることがクラフトビールとの付き合い方かなと思っています。まだまだクラフトビールの市場は狭いので、クラフトビールのイベントに行くと、実際に作り手の方と出会えて、お話を聞くことができるんです。小規模醸造の人たちが何を目指しているかということを聞いて、見届けるのが飲み手の役目かなと。

期間限定のクラフトビールを楽しむ

――そんな松原さんがおすすめのクラフトビールを教えてください。

たくさんありすぎて絞るのが難しいのですが、川崎にある東海道ビール川崎宿工場のビールは、高い技術を持つブルワー(ビール醸造家)の世界観が、ホップやスパイス、変わった副原料を用いて特徴的に表現されており、いつも新鮮な味わいの銘柄を発表されるので目が離せません。テイクアウトもできるので、家でも楽しんでいます。他には老舗の醸造所で言うと、7年前に衝撃を受けたのは「大山Gビール」の『ヴァイツェン』です。小麦を使ったビールで、発酵から醸し出るバナナのような香りが特徴的なんです。

さらに、大阪の「箕面ビール」は季節毎に旬の果物を使ったクラフトビールを発売するのですが、その中でも桃を使った『国産桃ヴァイツェン』は、ものすごく人気です。ビール好きの中では、このビールを飲むことを“桃狩り”と称しているほど。そして神奈川の「サンクトガーレン」では、湘南ゴールドという柑橘を使ったビールも季節の風物詩と言われるほど有名です。期間限定のビールですが、ぜひ一度飲んでいただきたいです。

季節に合ったおいしい飲み方がある

――最後に、ビールがおいしい季節を楽しむためのメッセージをお願いします。

ビールは1年中おいしいので特に季節はありませんが(笑)、でも、その時期に合わせた飲み方というのはあります。夏はキンキンに冷やしたものをゴクリと。寒い季節には、色が濃く、度数の強いものをちびりちびりと飲むという楽しみ方もあります。ビールの本場ヨーロッパ、特にベルギーなどでは温めて飲む「ホットビール」も人気ですよ。でも、どの季節でも自分に合ったビールの味わい方、楽しみ方を見つけていただくのが1番。ビールの魅力は多様なんです。

(TEXT:上原かほり)

※ メイン写真は記事をイメージして選定させていただきました
画像提供:Adobe Stock

取材協力

松原順子 (MJ) さん
ビアジャーナリスト/Youtuber
ビールと昆虫とリコーダーと天然石が大好きです。日本ビアジャーナリスト協会(JBJA)ではイベントサポートやBJAチューターとしても活躍中。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式YouTube「JBJAchannel」ではMCを担当。ぜひチャンネル登録してご視聴ください!
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