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インタビュー

料理の骨格を作る!伝説の家政婦・志麻さんが常備している“たった2つの調味料”とは?

8月25日発売の『cookpad plus 2022年秋号』で実現した、Kis-My-Ft2の横尾渉さんと伝説の家政婦・タサン志麻さんのスペシャルコラボ。今回は、そのコラボを記念して志麻さんに対談の感想や撮影秘話、さらに志麻さんのお料理に対しての思いについてインタビューしました。

“作ってもらう立場”になって得た刺激

――今回のスペシャルコラボは、横尾さんが志麻さんのリクエストに応えてくれるという内容ですが、実際に横尾さんが作ってくださったお料理はいかがでしたか?

普段は、私が料理を作ることが多いので、料理を作ってもらうというのはすごく新鮮な経験でした。自分の料理を誰かと一緒に作ることはあるけど、人がお料理を作っているのを見る機会はあまりないので、食材の組み合わせや切り方とか、自分とは違う発想が勉強になりました。

――勉強になったと感じた具体的なエピソードを教えてください。

お料理をしている姿を見ていて、すごくお料理が好きで、興味がある方だなと感じたんです。今回、横尾さんに「子どもが喜ぶメニュー」をリクエストしたら、たくさん野菜を挟んだ「豚と野菜のミルフィーユカツ」を作ってくださいました。私だったら、煮込んで食べやすくしたものを作ったと思います。横尾さんは、子どもが好きな揚げ物メニューを考えてくれて、しかも想像よりも柔らかく仕上がっていたので、子どももおいしく食べてくれそうだなと思いました。もう1品作っていただきましたが、いずれも私だったら浮かばないレシピでした。いつも料理の相談を受ける立場ですが、自分ひとりだと同じアプローチになりがちなので、刺激を受けましたね。

志麻さんが常備している調味料は「塩」と「コンソメ」

――対談の中で、塩とコンソメを常備しているとおっしゃっています。塩はわかりやすいのですが、コンソメは意外でした。

家政婦の仕事でいろんなご家庭に行きますが、意外とコンソメを置いていないご家庭が多いんです。コンソメは、和食の出汁と同じです。料理の骨格を作るイメージで私は使っています。あるとないでは味の仕上がり全く違うものになります。フランス料理ではフォンドボーなどを使いますが、家庭で洋食系の料理を作るときは、コンソメを使うと味のベースが作りやすいですよ。

――行ったお家にコンソメがないときは、コンソメの代わりに何かを使ったり、調理法を工夫されたりするのでしょうか?

コンソメがない場合は、煮込む前にお肉や魚に焼き色をつけてから煮込んだりします。煮込む食材に焼き色を入れることで、旨味をガツッと利かせることができるんです。もしくは、和風だしを代わりに使います。和風っぽい味にならないように、レモンやオリーブオイルと組み合わせて洋食に近づけるんです。

使った道具はすぐ洗う。面倒を残さないための工夫

――家政婦の仕事では、行った先のご家庭の調理器具を使われるそうですが、「こういうものがあると便利」とか、「包丁はしっかり研がれている方が良い」など感じることはありますか?

包丁が切れにくい場合、どうしても力が入ってしまいがちですが、切れにくい場合は力を入れないほうがよく切れます。包丁を研ぐのが苦手な方は多いと思うので、その場合は力を入れずに切るという方法を試してみてください。私は、お茶碗の裏を使って研いじゃいます(笑)。

ご家庭によって、道具が少ない多いはありますが、私はどちらの場合でも作り方や作業は全く変わらないんです。普段、自宅でも道具は少ないし、調理しながら洗い物も並行してするので、菜箸が1つあれば十分。これを持っていたら良いですよというものはないです。

――志麻さんのお話を聞いていると、お料理に対して必要なことは意外とシンプルなことなのだなと感じます。

お料理をするときって、「レシピ通りに作ろう」とか、おいしく作ることに一生懸命になるけど、実は大切なのはそこではないんですよね。半分くらいは洗い物や下準備の面倒なところだと思うんです。その面倒な部分をいかにうまくやっていくかってすごく大事だと思います。料理を早く作るためには、洗い物を増やさない方が良い。なので、なるべく使ったものはすぐに洗う。ブロッコリーを茹でただけの鍋やザルと、ハンバーグを焼いた後のフライパンと一緒にしない。サッと洗えるものに油汚れをつければ、洗う手間が増えてしまいます。うまく片付けていけば使う道具も、手間も少なくて済むんです。

――料理をしながらの片づけは、できたら良いなと思いながら、できないという人も多いと思います。

急にできるようにはならないかもしれませんが、それを意識するだけでも違ってくると思います。意識し続けることでだんだんできるようになってくるので、ぜひ試してみてください。

料理はラクをして、食事を楽しんでほしい

――志麻さんのご家庭では、大人と同じメニューを小さなお子さんも召し上がっているそうですが、大人と子どもで同じ料理を楽しめるためにされている工夫があれば教えてください。

和食は、お味噌汁、副菜、主菜があって、全部しっかり味がついていて、ごはんと一緒に食べることでちょうどいい味になりますよね。フレンチの場合は、メインにローストチキンや鶏の赤ワイン煮込みを作ったら、そこに茹でた野菜やお米を付け合わせとして用意します。ただ、その付け合わせは、味を薄くするか、味つけをしないことが多いんです。我が家では付け合わせには味つけはしません。そうすることで、小さな子どもでも食べられ、和食よりも味にメリハリが出るんですね。

――味つけをしていない付け合わせは、各自で好みの味付けにするということですか?

いちばん下の娘には、赤ワイン煮は味が濃いのですが、付け合わせの味つけをしていないじゃがいものピューレと混ぜて、お肉をほぐしてソースを足してあげれば味が薄くなって食べやすくなるんです。我が家では柔らかく煮たメニューが多いので、子どもと一緒に食べるとしても各自が食べやすいように調整がきくものばかりなんです。フランスは基本的に料理は取り分けるスタイル。みんなが同じものを楽しみましょうという精神から、比較的簡単なものを作ることが多いと思います。

――大人用、子ども用と作り分ける必要がない上に、食べるときにそれぞれの好みの味にできるというのはすごく良いですね。

我が家では基本的には前菜とメインの2品なので、作るほうもすごくラクです。味がしっかりしたメインと薄味の付け合わせをお皿の上で好きな味に仕上げる、という食べ方も取り入れてみてください。

――茹でただけの野菜を1品として出すと、手抜きと思われないか……という気持ちになりそうです。

フランスでは当たり前なんですけど、知らないと「茹でただけ?」と感じるかもしれません。確かに、レシピとは言えない1品かもしれないけど、私はいろんな野菜を茹でて付け合わせとして出すのが好きです。ソースをつけたり、潰してみたり。食卓を囲む人たちの好みがバラバラでも好きなように食べることができるし、何よりこの方法でラクをしてほしいです。

――ラクをする。すごく気持ちが軽くなる言葉です。

日本とフランスの2つの国を見ているからこそ、日本人の食は、「大変」だと感じます。『à table SHIMA』(志麻さんの料理を中心とした暮らしを提案するライフスタイルマガジン)でもよく言っているのですが、料理はもっとラクをして良いし、食事を楽しむという方に意識を変えてみてはいかがでしょうか。おいしいものを作ろうと、みなさん日々お料理を頑張っているけど、料理にかける時間より“食べる時間”のほうを大切にしてほしいです。新しいレシピを考えるのも仕事ですが、それ以上に私は、気持ちが軽くなる料理の考え方を、これからもみなさんにお伝えしていきたいなと思っています。

(写真:市原慶子、TEXT:上原かほり)

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タサン志麻

大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・ フランス校を卒業し、三つ星レストランでの研修を修了。日本に帰国後、老舗フレンチレストラン勤務などを経て、家政婦に転身。「予約が取れない伝説の家政婦」として注目される。

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