食と健康のエキスパート・管理栄養士の藤橋ひとみさんが「腸活」に関する豆知識をお届けする連載。「腸」は美容・健康の鍵を握る臓器。様々な心身のトラブルの解消のために日々の食生活の中で継続して実践できるメンテナンス術を分かりやすくご紹介していきます。
さつまいもがおいしい季節がやってきました。ここ数年、焼き芋ブームが続いており、以前よりもコンビニやスーパーで手軽に手に入るようになった気がします。プチ贅沢なブランド芋のお取り寄せも人気で、紅はるかや安納芋のほか、食感や風味が異なる様々な品種のさつまいもが出回っているので、自分の好みの品種を見つける楽しみもありますよね。
今回は、大人気の秋の味覚「さつまいも」を美腸ライフに上手に活用するコツをお伝えします。
この連載をお読みいただいている皆様であれば、すでにさつまいもが腸に良さそうなイメージをお持ちだと思いますが、実際のところもさつまいもは腸活中におすすめできる食品と言えるでしょう。その理由は、腸内の有用菌のエサ(プレバイオティクス)となり腸内環境を整えてくれる食物繊維が豊富に含まれている点にあります。[1,2]
同じ100gあたりで比べてみると、焼き芋、ふかし芋は生のキャベツの約2倍、レタスの約3倍の食物繊維が含まれていることをご存知でしたでしょうか?
※文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂)より
(★) 女子栄養大学出版部, 調理のためのベーシックデータ第6版より
さつまいもを食べることが本当に腸活に良い影響を与えるのか、直接評価をした研究があるかを調べてみたところ、日本で行われた研究が1つ見つかりました。
その研究では、便秘傾向のある女子学生22名にさつまいもの一種である紅天使(100g当たりの食物繊維含有量:2.9g)を食べてもらい、便の回数・量を摂取開始前の1週間と比べていました。さつまいもを食べる量を 1週目は1日300g、2週目は休止期間として食べない(0g)、3週目は1日100gと変化させて比べた結果、排便量は紅天使300g食べることで約1.6倍、100g食べることで約1.5倍に増加しました。さらに、排便回数もさつまいも摂取量の増加に伴い増加していました。300g食べることでお腹の調子は良くなり便が柔らかくなったと評価されましたが、膨満感に変化はありませんでした。便を採取して、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう=腸内フローラ)も詳しく調べたところ、さつまいもを食べることで有用菌が増加していました。[3]
この研究では、便の回数・量も増えて、さらに腸内環境もよくなるという結果が出ていましたが、限られた人数、期間などの条件で実施されたことをふまえると、この結果だけではまだ「さつまいもが便秘改善に効果的」とはとははっきりと言い切れません。しかしながら、このような研究がされているのはとても興味深いことですよね!
シンプルに焼いたり蒸したりするのでも良いですが、料理やスイーツに活用して楽しめるのも、さつまいもの魅力のひとつではないでしょうか。その際には、ぜひプレバイオティクス(腸内細菌のエサとなる食品成分)×プロバイオティクス(腸内で有用菌として働く生きた微生物)の組み合わせを覚えておくと良いでしょう。[1]
この説明だけを読むと「なんだか難しそう」と感じられるかもしれませんが、一番簡単にできる実践法は「発酵食品とさつまいもを組み合わせで食べること」です。発酵食品の中には、ヨーグルトのように乳酸菌などの生きた有用菌が含まれているものもあれば、すでに菌は死んでしまっている場合もありますが、その場合でも死菌や微生物が作った代謝産物が腸に良い働きをしてくれることがわかっています。[4]
私のお気に入りはさつまいもヨーグルト。朝ごはんやおやつにぴったりのメニューで、焼き芋を冷凍庫にストックしておき、温めてヨーグルトをかけるだけで簡単に腸活メシが作れてしまいます。おうちに焼き芋がない場合は、生のさつまいもを電子レンジで蒸して作ることもありますよ。味噌と組み合わせてさつまいもの味噌汁にするのもおすすめです。
おいしいだけじゃなく、腸に嬉しい働きをしてくれる栄養成分を補えるさつまいもは、罪悪感なく食べられる自然なやさしい甘さが魅力の秋の味覚。さつまいもが手軽に手に入る旬の時期。ぜひさつまいもを美腸ライフに取り入れてみてはいかがでしょうか。
〈参考文献〉
[1] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 腸内細菌と健康
[2] 文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[3] 伴野太平ほか, さつまいもの摂取が女子大学生の排便状況ならびに腸内常在菌構成に及ぼす影響, 日本栄養・食糧学会誌第 69巻 第 5号 229-235(2016)
[4] Salminen S, et al. The International Scientific Association of Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of postbiotics. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021 Sep;18(9):649-667.
(すべて2022年10月3日閲覧)
※ 記事のメイン写真は記事をイメージして選定させていただきました。
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株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役。フリーランス管理栄養士として、商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。豆腐や豆乳、ソイオイル、味噌など、大豆関連の資格を多数所有し、大豆や腸活分野の専門家として活動する中で、最近は日本人が不足しがちな食物繊維の宝庫である「おから」に注目し、有効活用できる方法を広げる活動に注力している。著書「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ(ベストセラーズ)」
●所有資格
管理栄養士、調理師、製菓衛生師、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、豆乳マイスタープロ、おから味噌インストラクター、ソイオイルマイスタープロ、おから再活プロデューサー、インナービューティープランナー、発酵食品ソムリエほか