【今週のおすすめの一冊 vol.45】編集部が特に「おもしろい!」と注目した料理にまつわる本をピックアップし、気になる中身をダイジェストでお届け。今回は『さつまいものお菓子』(家の光協会)についてご紹介します!
最近スーパーやコンビニなどで見かける機会が増えた焼きいも。人気専門店が誕生したり、焼きいもに特化した「やきいもフェス」が行われるなど、最近の焼きいも人気は止まることを知りません。
そんな今おすすめしたいのが、人気料理家・若山曜子さんの新刊『さつまいものお菓子』。
焼きいもを購入し、昔のもそもそした食感との違いやおいしさに感動した若山さん。低温で長時間加熱したさつまいもは、それだけでひとつのお菓子になりうる甘みとなめらかなねっとりした食感があり、お菓子作りとの相性の良さに気づいたそう。
それ以来、さつまいもの控えめな甘さと優しい風味を活かし、さまざまな素材を掛け合わせ、新たなさつまいもレシピを考案する楽しさに没頭。
その言葉通り、本書にはスイートポテトや大学芋などの定番のさつまいもお菓子から、和とアジアのお菓子など、さつまいもと焼きいもを使った幅広いレシピが紹介されています。
今回は本書から「さつまいものスコーン」を紹介します。さつまいもの焼き菓子と聞くと、しっとり食感のスイートポテトなどをイメージすることも多いですが、サクッとした食感のスコーンで、さつまいもの新たなおいしさを味わってみてくださいね。
生地に焼きいもをたっぷりと忍ばせて。焼きいもの水分によって生地の状態が変わるので、水分は少しずつ加えてください。表面にブラウンシュガーを散らして焼き、ザクッと甘い香ばしさもおいもにぴったり。
<材料>6~9個分
A
薄力粉(エクリチュール)……150g
ベーキングパウダー…… 小さじ1と1/2
ブラウンシュガー(またはきび砂糖)……大さじ1と1/2
バター……60g
焼きいも(手作りまたは市販で、皮をむいたもの)……正味100g
牛乳とプレーンヨーグルト(無糖)……同量ずつくらい、合わせて50~80ml
◎仕上げ用
牛乳、ブラウンシュガー……各大さじ1
※エクリチュールがなければ、1/3量を強力粉に替えるか、一般的な薄力粉のみでもOK。
<下準備>
・天板にオーブンシートを敷き込む
・オーブンを200℃に予熱する
・バターは1.5 ㎝角に切り、冷蔵庫で冷やしておく
・焼きいもは2㎝角に切る
<作り方>
1. ボウルにAを入れて泡立て器でざっと混ぜ、冷やしておいたバターを加え、カードで切るように混ぜる。バターがあずきくらいの大きさになったら軽く手でつぶしてすり合わせる。
2. 焼きいも70gを加え、牛乳とヨーグルトを混ぜたものを50ml加える。まとまりにくければさらに牛乳とヨーグルトを少しずつ入れる。ざっと混ぜる。
3. 残りの焼きいもは2に入れる。混ぜないでOK。
4. オーブンシートを広げ、3をのせ、オーブンシートをもう1枚かぶせる。
5.めん棒で軽くのばし、上のオーブンシートをはがして、下のオーブンシートを持ち上げて半分に折る。2~3回繰り返す。べたつくようなら打ち粉をする。
6. 厚さ2センチ、12×16センチほどの長方形にのばし、6~9等分に切る。仕上げ用の牛乳を塗り、ブラウンシュガーを散らす。
7. 190~200℃のオーブンで20〜25分焼く。
本書の最大の特徴は、さつまいもと組み合わせる素材の豊富さや意外性。ほうじ茶、黒糖、チーズ、キャラメル、ナッツ、りんご…など、料理家の視点から選び抜かれた素材との組み合わせで、馴染みあるさつまいもがこれまで味わったことのないワンランク上のお菓子に。
手軽に味わいたい人には、市販の焼きいもに調味料をかけるだけのアレンジや食べ方も紹介されています。メープルシロップやジャムなど、合わせ方によっては市販の焼きいもがワインにも合う一品になるから驚きです。
レシピの新しさに加え、うつわやクロスなどのシックでエレガントなスタイリングも必見。子供の頃から食べていた懐かしいさつまいもスイーツが大人の楽しみになる、そんな一冊になっています。
秋に収穫されますが、貯蔵すればするほど水分が抜け甘くなり、実は夏前までおいしさを堪能できるさつまいも。味わえる期間が長いので、レシピを通して、じっくりとさつまいもの魅力やおいしさを体験してみてくださいね。 (TEXT:小菅祥江)
料理・菓子研究家。東京外国語大学フランス語学科卒業後、パリへ留学。ル・コルドン・ブルーパリ、エコール・フェランディを経て、フランス国家資格(CAP)を取得。パリのパティスリーやレストランで経験を積み帰国。現在は、雑誌や書籍、企業のレシピ開発のほか、お菓子と料理のオンライン教室を主宰。SNSでの発信でも注目されている。おいしくて、おしゃれな、そして作りやすいレシピが大人気。素材別のスイーツレシピにも定評がある。『至福のチーズレシピ』『ストウブだからおいしい毎日ごはん』(以上家の光協会)など著書多数。