「うちの子、なんだかいつもイライラしている」「最近ぼんやりしていて、忘れ物も多い……」それ、もしかしたら栄養失調が原因かもしれません。脳もからだの一部であり、栄養素で動いています。子どもの気になる状態が、性格ややる気の問題ではなく、単に、からだに必要な栄養素が足りていないせいだとしたら……?今回は、栄養療法を実践している梶尚志医師による著書『え、うちの子って、栄養失調だったの?その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)から、子どもの体調不良改善のヒントを少しだけお届けします。
こういった症状も、お子さんの性格の問題ではなく、脳に栄養が足りていないことで起きている可能性があります。脳内のホルモンには、やる気を高める興奮系のもの、安定させる抑制系のもの、これらを調整する調節系のものがあり、バランスが取れているのが脳(精神状態)の安定した状態です。
イライラする、キレやすいというのは、このバランスが崩れて興奮系のホルモンが優勢にはたらいている時に起こります。これは、GABAなどの抑制系のホルモンやセロトニンといった調節系のホルモンが不足しているからなのです。ということは、これらのホルモンの原料であるタンパク質、そしてビタミンB6、ナイアシンといったビタミンB群の不足が考えられますね。
それから鉄不足の可能性もあります。鉄もメンタルホルモンを造るのに必要で、これらの栄養素が足りなくなると情緒が不安定になって、イライラしたり、キレやすくなったり、ということが起こります。
特に、成長期の子どもたちは、脳の発達や筋肉、骨の成長のために鉄の消費が激しいので、大人よりも鉄不足が起こりやすいのです。部活などで運動しているお子さんは、なおさら注意が必要です。
鉄を補いたい場合に知っておいていただきたいことがあります。鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があるということです。
おもに、肉や魚に含まれているのがヘム鉄で、野菜や穀物に含まれているのが非ヘム鉄です。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて吸収率が4〜5倍高いとされ、タンパク質が補給できることを考えても、動物性食品を食べることでのヘム鉄の摂取をおすすめします。
ひんぱんにお腹が痛くなったり、下痢や便秘を繰り返したり、というお子さんはたくさんいます。お腹の調子が悪いことが当たり前になっていて、よほどひどくない限り大人に伝えないため、お子さんのこのような不調を知らない親御さんは案外多いように思います。これはとても問題です。
このような症状が、腸内環境の乱れから起こっているのは簡単にわかりますよね。腸内の環境が悪くなって炎症が起こると、水分を吸収する機能がうまくはたらかず、下痢をしたり、その反対に便が硬くなったりします。腸内環境は腸内細菌の善玉菌が整えていて、その代表的なものが乳酸菌です。乳酸菌をしっかり摂ることは大事ですが、注意点もあります。
乳酸菌と聞くとすぐに乳製品を思い浮かべると思いますが、リーキーガット症候群を引き起こすカゼインを含んでいるという難点があるのです。植物由来のヨーグルトという選択肢もおすすめですし、乳酸菌が豊富な食品が他にもたくさんあります。日本には、みそやこうじなど、乳酸菌を含む伝統的な発酵食品が身近に数多くあります。ぜひ、そういった食材を積極的に取り入れて、腸内環境を整えていきたいものです。
慢性的な症状ではなく、テストが近づいたり、遠足や運動会の前になったりすると、ひんぱんにお腹が痛くなって下痢をしてしまう。朝からお腹が痛くて学校に行けない、といった経験をお持ちのお子さんも多いでしょう。このような状態を過敏性腸症候群といいま すが、これもまた腸内環境の乱れから起こります。
うーん、それはメンタルの問題では? と思いますよね。そのとおり、まさにメンタルの問題なのですが、イコール腸内環境の問題でもあるのです。最近、「腸脳相関」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは、脳(=メンタル)と腸(腸内環境)が関わり合っているということなのです。
というのも、セロトニンやオキシトシンといった幸せホルモンは、腸で造られていることがわかってきました。腸内環境が乱れていると幸せホルモンを造る過程に問題が起きてしまい、うまく造り出せなくなってしまうのです。
腸の状態は心の安定と密接に関わっているのですね。ストレスに負けないためにも、腸内環境を整えることでメンタルホルモンを増やすことは、とても大事です。
もう一つ考えられるのは、ビタミンDの不足です。というのは、ビタミンDには、腸粘膜のバリア機能を強化するはたらきがあるからです。ビタミンDも積極的に摂るようにしましょう。
本文は『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)より一部抜粋・編集しています。
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育ち盛りの子ども達にとって、体と心の発達にバランスの取れた食事はとても大切です。
「落ち着きがない」「キレやすい」「頭痛」「朝起きられない」「不登校」「発達障害」などなど、子どもの様々な困った症状の原因が、本当は食事、栄養にあるとしたら。そして、栄養を改善することで、それらの症状がなくなってしまうとすれば・・・。本書には、そんな子ども達を沢山診てきた、私の実際の症例もご紹介しました。
体は栄養素=食事からできているので、実際にお子様の心と体にとって、大切な栄養素や参考レシピも、イラストや漫画をふんだんに載せて、わかりやすく紹介しています。親子で手にとって、即、実践して頂ける子どものための栄養本です。
『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)
朝起きられない、落ち着きがない、キレやすい……
子どもの不調は栄養不足が原因だった
たちまち重版となった、かくれ栄養失調シリーズ待望の第2弾!
不登校、発達障害、アトピー性皮膚炎など、近年増え続ける子どもの不調も栄養不足が原因です!
成長期にある子どもは、たくさんの栄養が必要なため栄養失調に陥りやすく、また不調をうまく訴えることができないので、発見が遅れ非常に重篤な状態になることもあります。病院へ行っても薬を飲んでも良くならない、「うちの子なんかおかしい……」と感じたら、栄養失調を疑ってみてください。
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目次
序章 うちの子、何かおかしい。それ、栄養失調かもしれません!
第1章 医師が見た子どもの「かくれ栄養失調」実録
第2章 あるある食事の甘いワナ。その食事キケンです!
第3章 知識は薬より役に立つ! 子どもを育てる5つの栄養素
第4章 よくある困った症状別! いま必要な栄養レスキューはこれだ!
第5章 明日からできる、「脱」子どもの栄養失調 ポイント&レシピ
梶 尚志(かじ たかし)
梶の木内科医院院長/栄養療法実践医。代表作:『え、私って、栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』(みらいパブリッシング)。1989年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業。2000年 岐阜県可児市に梶の木内科医院開設。年間約5万人の患者を診察する中で、通常の診察では解決できない不調が多いことに危機感を感じ、改善策を模索。分子整合栄養医学との出会いをきっかけに、不調の原因が栄養状態にあることを確信する。以来、栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行い、不調の改善に取り組んでいる。