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「最近よく眠れない…」を解決するのは、アレを入れた牛乳⁉️ 快眠方法を医師が解説

「昔はすぐ眠れたのに、最近は寝るのに時間がかかる……」「朝までぐっすり眠れず目が覚めてしまう……」 年齢を重ねていくと、こうした睡眠に関する悩みが増えてくる人が多いようです。でも実は、その悩みは生活や食の習慣を変えることで、改善できるかもしれません。そこで今回は、精神科医・保坂隆氏による著書『50歳からの これでグッスリ!! 眠りの習慣』(小学館)から、より良い睡眠のための食生活のヒントを少しだけお届けします。

年とともに減っていく睡眠ホルモンは、「食」で補強できる!

睡眠は一日1回。昼寝などを含めても2回ほどです。ところが食事は一日3回。朝のおめざや3時のおやつ、間食、喫茶や飲酒もカウントすれば、私たちは一日10回近く、さまざまな栄養や、薬理作用のある物質を体に入れていることになります。それだけに、睡眠の質を高める食事の工夫ができれば、その効用は非常に大きいものになるでしょう。反対に、睡眠の質を低下させる食事をしていれば、その悪影響もまた、大きいことになります。そこで、睡眠にいい食事、好ましくない食事についてしっかりと知っておきましょう。

まず、すんなりと眠りに入るためには、睡眠をうながすホルモンであるメラトニンという物質が重要です。ところが、メラトニンは年とともに分泌量が減っていくことがわかっています。子どもの頃はすぐに眠れたのに、年をとるにつれて不眠に悩むようになりがちなのは、メラトニンの減少が関係しているといわれています。

「それならばメラトニンのサプリメントを飲めばいい」と考える人もいるでしょう。しかし、海外ではそういうサプリもありますが、日本では販売が許可されていません。個人輸入してまで飲むよりも、毎日の食事で改善を図るべきでしょう。

メラトニンが多く含まれている食材には、青汁の原料として知られるケールや、シリアルに含まれるオーツ麦、トウモロコシ、貝割れ大根などがあります。寝つきが悪い、快眠できていないと感じる人は、こうした食材を多めに摂るように心がけましょう。

砂糖入りの牛乳が、心地よい眠りのカギになる!

手軽にメラトニンを補える食品の代表が牛乳です。

メラトニンを体内で生産するためには、必須アミノ酸の一種である「トリプトファン」が重要な役割を果たしています。トリプトファンは自律神経を整えて緊張や不安を取り除くセロトニンという物質をつくる材料になります。セロトニンは朝起きたときから分泌が始まりますが、夜になると、このセロトニンを材料にして「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンがつくられるのです。

トリプトファンはアミノ酸なので、タンパク質をたくさん食べれば十分に摂れます。しかし、「高たんぱく食の代表といえば肉だ」とばかり、肉をどんどん食べていると、コレステロールや脂質も多く摂るようになり、動脈硬化や肥満、脂肪肝などの心配が出てきます。最も手軽で健康的にトリプトファンを摂ることを考えると、おすすめなのが、朝、昼、夜の食事の前に、砂糖入りの牛乳をたっぷり飲むことです。

牛乳には、トリプトファンがたくさん含有されていますが、吸収されたトリプトファンが血液に入り、脳に送られるためには、インスリンが必要なことがわかっています。そこで、インスリンを分泌させるために、牛乳に砂糖(ブドウ糖)を入れるわけです。こうすれば、十分な量のトリプトファンを脳内に送れます。

夜は牛乳を温めて飲むのがおすすめです。欧米では昔から「寝る前にホットミルクを飲むとよく眠れる」といわれていて、体を温めることからも、安眠効果、リラックス効果があるとされていました。それもそのはず、そもそもミルクは親が子どもに与えるもの。ミルクをたっぷり飲んだ赤ちゃんは、多少の刺激を与えても目を覚まさず、ぐっすりと眠っていますよね。大人の場合にも同様の鎮静効果をもたらしてくれるのです。

ただし、牛乳に含まれる脂質や糖質が胃の中に残っていると、睡眠中にも消化器官が働くことになり、熟睡しにくくなります。そこで、寝る直前よりも早めの時間、夕食前などに飲むほうがいいでしょう。

ここまで読んで、「一日3回も砂糖入りの牛乳を飲んだら太るのでは」と心配になるかもしれませんね。でも、大丈夫です。セロトニンは別名「幸せホルモン」ともいわれ、精神を安定させる働きがあります。そのため、脳の摂食中枢を抑制して、食欲を抑える作用があるのです。つまり、トリプトファンをたっぷり摂ってセロトニンが十分に分泌されるようにしておけば、食欲が抑えられるのです。実際、食事前に砂糖入り牛乳を飲む生活を送った結果、一週間に1キロほど体重を減らせた人もいるそうです。

本文は『50歳からの これでグッスリ!! 眠りの習慣』(小学館)より一部抜粋・編集しています。

メイン画像提供:Adobe Stock

著者メッセージ

「眠りの質を高める」方法については、生活習慣、睡眠の環境、心身のリラックス法など、さまざまなアプローチがありますが、毎日の「食」も大切です。
寝つきの悪さに悩まされたり、短時間の睡眠ですっきり疲れが取れないという人におすすめしたいのが、ご飯と味噌汁という日本の伝統的な朝食です。トリプトファンを多く含む食べ物としては、牛乳など乳製品のほかに、味噌、豆腐、納豆などの大豆製品、卵などがあります。まさに日本の朝食に登場する食材ですね。このような昔の日本人の知恵には、本当に感心してしまいます。
しっかりと朝食をとり、昼間エネルギッシュに活動すれば、夜には脳と体が休息を求め、自然な眠りが訪れるでしょう。こうした食の工夫で、健康な生活を目指してみてください。

書籍紹介

『50歳からの これでグッスリ!! 眠りの習慣』(小学館)
5、60代で睡眠不足だと認知症のリスク↑

●以前はすぐに眠れたのに、最近あまり眠れない。日中だるいし、頭が働かない
●夜中、何度も目が覚めて困る
●もっと寝ていたいのに、朝早く目が覚める
●いびきがうるさい、と指摘される、あるいは、いびきをかいていると自認している
●平日は睡眠時間がとれなので、週末に寝だめしているけど、大丈夫?

など、睡眠に対して何かしらの不安をもつ中高年~シニア世代が多いです。日本人は世界的にみても、睡眠時間が短いと言われています。高齢になるほど、脳の機能が弱まり、「覚醒」も「睡眠」も長時間続けるのが難しくなってくるのも事実です。

本書は、不眠の原因を説明しつつ、眠れる環境作り、心のあり方、食などの多方面からアプローチ。精神科医による、優しく寄り添う姿勢で、あなたの「睡眠負債」を減らし、睡眠障害を解決するお手伝いをします。

著者紹介

保坂 隆(ほさか たかし)
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。1952年山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科入局。米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長、聖路加国際大学臨床教授などを経て現職。著書(監修含む)に『図解「熟睡できる人」の習慣』『こころのお医者さんが教える プチ対人ストレスにさよならする本』(ともにPHP研究所)、『精神科医が教える 人間関係がラクになる すぐできるコツ』(三笠書房)、『精神科医が教える すりへらない心のつくり方』(大和書房)、『「頭のいい人」の快眠生活術』(コスミック出版)などがある。

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