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コラム

ブロッコリーが老化防止に良いってホント⁉︎ 知られざる「若返り物質」を医師が解説

「野菜は体にいい」「野菜を食べると健康になれる」 そんな言葉をよく聞くけれど、具体的に何が体に良いのか、理解している人は少ないのではないでしょうか。実は、野菜の持つ成分は、薬に例えることができるぐらい、体に影響を及ぼす効能があるのです。そこで今回は、一石英一郎医師による著書『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)から、野菜で健康になる食生活のヒントを少しだけお届けします。

ブロッコリーで老化防止⁉️注目の若返り物質「NMN」

平均寿命が伸び続けている現代において、一定年齢以上の人々にとっては、「できることなら若返りたい」という欲求も、切実なものになっているはずです。もしも、老化に抗い、若返りを促すような物質があるとしたらどうでしょうか。しかもそれが、ある野菜に豊富に含まれているとしたら?

ことの発端は、二匹のマウスを使ったある実験でした。一方は老齢の個体、そしてもう一方は若い個体です。驚くべきことに、その実験では、年老いたマウスが若いマウスから「若返り物質」とでも呼ぶべきなにかを体内に取り込み、みるみるうちに老齢のマウスが若返りを果たしたのです。

その物質の正体を探って世界中の研究者たちが探究を進める中、あるチームがついに問題の物質、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)にたどり着きました。その後、動物でもヒトでも、NMNを摂取することで、あきらかな若返りの兆候を示すことが続々と判明していきました。

マウスを使った実験では、老化に伴う体重増加の減少、エネルギー代謝の改善、網膜の視細胞の機能向上、骨密度の増加といった結果が得られ、ヒトを対象とした臨床試験でも、インスリン感受性の大幅な改善(それは、糖尿病の予防や改善につながります)や、筋肉の再構築を促す遺伝子の働きの向上などが見られました。

高齢の人がNMNを服用すると、俊敏な身のこなしが回復するといった結果も報告されています。アルツハイマー型認知症や心不全などの疾患にも効果があるとされています。まさに若返りです。

ではそのNMNは、何を食べれば補給できるのでしょうか。肉類や魚介類などには、あまり含まれていません。野菜や果物には比較的多く含まれていますが、最近になって、実はブロッコリーがこのNMNをとりわけ豊富に含んでいるということがわかってきました。

昔からブロッコリーは、健康野菜ランキングや、デザイナーフーズなどにおいて上位に位置づけられていました(デザイナーフーズ・プロジェクトは、がん予防に効果のある食品をランキングするアメリカの研究です)。たしかにこの野菜は、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、葉酸、カリウム、鉄、βカロテンなど豊富な栄養素を持ち、がん予防に効果のあるスルフォアランを含んでいることでも知られています。

その栄養素リストに、NMNも追加すべきだということです。ブロッコリーが健康野菜として特に脚光を浴びている理由がはっきりとわかり、私としても「ああ、やっぱり!」と納得が深まる思いです。

ほぼトマトにしかない重要な栄養素「リコピン」に注目!

栄養素豊富な野菜といえば、トマトもそうです。ただし、野生種のトマトはまずくて、栄養価も高くありません。農耕を始めた人類が品種改良を重ねることによって、現在の大きくて真っ赤なトマトになったのです。

トマトの持つ栄養素は、βカロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCなどさまざまですが、特に有名なのは、あの赤い色のもととなっている色素、リコピンです。βカロテンの仲間のカロテノイドで、ビタミンEの100倍もの抗酸化作用があることで知られています。

リコピンは、もともとはトマトが酸化から自らの身を守るために作り出した成分ですが、それは同時に、人類の細胞を守ることにも役立てられてきました。しかもこの成分は、トマト以外ではスイカくらいからしか摂ることができません。ただしスイカだと夏期限定になってしまうため、「リコピンはトマトから摂る」と考えておいた方がよさそうです。

トマトを食べない人は、リコピン欠乏症になる可能性があります。つまり、トマトが嫌いだと、リコピンという貴重で有益な成分を摂取することができず、生きていく上で損をするとも言えます。田舎では、「ひとつ嫌いなものがあると、三倍損をする」と言われていました。リコピンの効用があきらかになるにつれて、そのことが科学的にも証明されつつあるということです。

リコピンには、抗酸化作用のほかにも、生活習慣病やがんの予防、血糖値の改善、動脈硬化の予防、花粉症の緩和などさまざまな効能がありますが、それが筋肉増強にも関与しているということをご存知でしょうか。そのことを発見したのは、実は私が組んでいた研究チームです。

リコピンを摂取させたラットと、摂取させなかったラットとで、それぞれに運動をさせることで比較実験を行なった結果、摂取させた方が筋肉モリモリになったのです。これは、リコピンに筋肉増強作用があることを証明した世界初の発見でした。抗酸化作用を持つリコピンが、思いもかけなかった筋肉増強作用をも兼ね備えていたことは、植物成分の多機能性の好例のひとつです。抗酸化作用や抗菌作用などを持つアントシアニンが、なぜか眼精疲労の予防にも役立ったりすることと似た現象ですね。

本文は『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集しています。

画像提供:Adobe Stock

著者メッセージ

野菜―あるいはそれを含む植物という種に関しては、その驚くべき生存戦略、生き抜くために備えている精巧で絶妙な仕組みの数々に、私はかねてより驚嘆の念を抱いており、いつかそれをテーマに本を書きたいという思いを抱いていました。
今回、この本を通じて、これまでに蓄積してきた知識をまとまった形で披露できたことは、何より喜ばしいことです。この本を読むことで得られた知識を携えて、ぜひ、野菜の持つ神秘のさまざまを、自らの血肉としていっていただきたいと思います。
本書を読めば、これまで野菜が苦手だったという方も、野菜の重要性がよくわかり、野菜が大好きになっていくはずです。みなさん、野菜を食べましょう!

書籍紹介


へぇーの連発! 野菜雑学&新常識が続々! 

・トマトを食べない人は、リコピン不足になる 
・ニンニクより効率的な万能薬のジャガイモ
・腸内の善玉菌を育てるのは実は野菜
・血糖値を下げるのはブロッコリとコマツナ
・タンパク質ファーストは本当にいいのか?
・がんを予防する「スーパーベジタブル」の誕生 

野菜と人間の歴史は実は深い。私たち人間は、野菜の生存戦略を利用して生き延びてきた。遺伝子を研究し、予防医学に取り組んできた医師が、なぜ私たちは野菜を食べるべきなのかを科学的に解説する。

野菜の生存戦略ってなに?
野菜を食べなかったらどうなるの?
ベジタリアンになるべき?
おススメの食べ方は?

野菜で病気を防ぐ! 
100歳まで生きる!
きっと野菜を見る目が変わるはず!

著者紹介

一石英一郎(いちいし えいいちろう)
1965年生まれ。兵庫県出身。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学/予防医学センター教授。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。世界の著名ながん研究者が名を連ねる米国癌学会(AACR)の正会員(ActiveMember)。DNAチップ技術を世界でほぼ初めて臨床医学に応用し、論文を発表。人工透析患者の血液の遺伝子レベルでの評価法を開発し、国際特許を取得。長年にわたり、遺伝子の研究をおこなっている。主な著書に『日本人の遺伝子 ヒトゲノム計画からエピジェネティクスまで』(KADOKAWA)『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』(アスコム)『「胃」を整えると自然と「不安」が消えていく』(アチーブメント出版) などがある。

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