ヘルシー、節約……でも、それだけじゃない! 身近な食材「お豆腐」の魅力はまだまだあるんです。この連載では、豆腐マイスター・工藤詩織さんに、お豆腐をもっとおいしく楽しむための知られざるノウハウを伝授してもらいます。「そうだったんだ!」と思わず納得の意外な活用法を知れば、きっと試してみたくなるはず♪ あなたの食卓のお豆腐が“進化”すること間違いなしですよ!
旬野菜などの食材をお豆腐の「衣」で和える「白和え」。春は菜の花や山菜を和えた白和えが和食屋さんの小鉢メニューにも登場する時期ですね。
おいしいけれど、下ごしらえなど手間がかかりそう、定番白和えは見た目が地味でお子さんが喜ばない、といったイメージから、ご家庭ではわざわざ作らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は白和えこそ、味付けや食材を変えるだけで、和・洋・中・エスニック、どんなジャンルの料理としても成立してしまう、まさに“変幻自在の豆腐料理”なんです!
まずは、白和えの基本を押さえつつ、皆さんのアイデアの引き出しが増えるような「アレンジ白和え」をご紹介します。
それでは、ベースとなる白和えの「衣」の作り方をおさらいしましょう。すった白ごまと、水切りをしたお豆腐をペースト状にしながら合わせていきます。ここで用いるのが、「すり鉢」または「フードプロセッサー」です。
すり鉢で“すり潰す”方法と、フードプロセッサーで“攪拌する”方法では、食感が変わります。お豆腐に「粘り」が出るのがすり鉢、空気を含んだ「ふわっと感」が出るのがフードプロセッサーです。すり鉢で潰した豆腐をさらに裏ごしすれば極限までキメ細かになります。
すり鉢もフードプロセッサーも使わず、スプーンやフォークで潰す方法も。こちらはカッテージチーズのようなつぶつぶ感をアクセントとして楽しむことができます。
お豆腐を潰したら、塩・砂糖・薄口醤油などで衣の味を整えます。ここに酢を加えたものを「白酢和え」といいます。塩分を入れすぎるとお豆腐から水分が出やすくなることだけ留意しておきましょう。
あとは、用意しておいた食材と和えるだけ。ポイントは、
① 和える食材にはある程度の下味をつけること
② 水っぽくならないようお豆腐だけでなく食材の水気も切っておくこと
③ 衣と食材は食べる直前に和えること
の3つです。これさえ守れば、お好みの食材をお好みの潰し加減の衣でおいしくいただけますよ。
補足ですが、白和えに使うお豆腐選びについて。江戸時代の豆腐料理本『豆腐百珍・続編』に出てくる白和えをはじめ、多くの白和えレシピでは「もめん豆腐」が用いられています。
一方、近年のレシピ本では、「きぬ豆腐」を使ってよりキメが細かくクリーミーな白和えに仕上げている例も多くあります。きぬの場合は和えるだけでなく、ソース感覚でかけて食べる例も。
実際に比較してみましたが、もめんの衣は、ぽてっとした重さと豆腐の風味を感じ、きぬの衣は滑らかな口当たりでクセのない印象です。 若干ですが、きぬ豆腐(特に充填タイプのもの)を使うと、衣から水分が出てきやすいようです。
スタンダードは「もめん豆腐」と言えそうですが、和える食材との相性を考えてお豆腐の種類を選んでいただければと思います。
さて、今回は和のジャンルを飛び越えた白和えや、時短白和えなどをご紹介したいと思います。
まずは、洋風白和え。乳製品やねっとり感が出やすい食材などをプラスして、まったりとしたコクのある衣にアレンジ。例えば、基本の衣にクリームチーズを混ぜた白和え。和えるのは塩胡椒で炒めたアスパラと生ハム。オリーブオイルを適宜垂らし、ブラックペッパーで仕上げれば完成です。
お次は、さいの目にカットしたアボカドとミニトマトを和えた白和え。ほんのりわさびを効かせても美味しいです! ハーブや柑橘調味料を合わせるとさらに爽やかに。例えば、「塩レモン」をプラスした白和えは、マヨネーズ代わりのソースとしてブロッコリーとの相性も抜群です♪
さらに変化を楽しむならば、韓国・エスニック風味の白和えはいかがでしょうか。驚くほど簡単なのは、キムチ白和え。ちぎった海苔とごま油をトッピングすればやみつきの一品が完成です!
それから、カレー粉をプラスしたスパイシー白和えは、ゴーヤなどの苦味野菜とも相性抜群、食欲をそそります。
究極の時短白和えは、缶詰や佃煮を活用しましょう。流行りの鯖缶をはじめ、ツナ缶、アンチョビ缶、カニ缶など。具材をほぐして衣と和えて、塩加減など味を整えれば、火も包丁も使わずにあっという間に完成です。
昆布の佃煮やちりめんじゃこなど、開封後も冷蔵庫の片隅に放置されがちな惣菜たちも救済できます。ちりめん山椒の白和えは、お豆腐と山椒の相性が抜群で、こんなに簡単でおいしくていいの?と思うほど。
ちなみに残った白和えは、卵と混ぜて卵焼きやオムレツにしたり、サンドイッチに挟む、トーストに載せるなど、リメイクできますよ。作りすぎてしまったときは、ぜひお試しください!
今回の執筆にあたり、江戸時代の料理本から最新の料理本まで、さまざまな白和えレシピを研究してみましたが、白和えの絶大なる包容力は恐るべし!と改めて思いました。
旬の食材を味わうもよし、冷蔵庫に眠る食材を活かすもよし。“正統派”の白和えも絶品ですが、皆さんの発想力でもっと自由に白和えを楽しんでいただけたら嬉しいです!
幼少から豆中心の食生活を送り、豆腐がいつも暮らしの中心にある無類の豆腐好き。日本語教師を目指して勉強する過程で、食文化も一緒に伝えたいと「豆腐マイスター」を取得。国内にとどまらず海外でも、手作り豆腐ワークショップや食育イベントを実施して経験を積む。2018年より「往来(おうらい)」をテーマに本格的に活動を開始。豆腐関連のイベント企画・メディア出演などを通して、各地で豆腐文化の啓蒙活動を行っている。「マツコの知らない世界」(TBS系)、「ヒルナンデス」(日本テレビ系)、「ごごナマ」(NHK)等へ出演。
【
Facebook】まめちゃんのダイズバーシティ計画!
【Instagram】@tofu_ a _day
【クックパッド】お豆腐進化論のキッチン