料理僧・青江覚峰(あおえ かくほう)さんが提案するのは、誰でも簡単に作れる「一汁一菜のお寺ごはん」。実際にお坊さんたちが食べている、肉や魚を使わない一工夫あるレシピを教えていただきました。からだと心がほっとゆるむ、優しい味わいのお料理ですよ。
こんにちは。お坊さんの青江覚峰(あおえ かくほう)といいます。今回からこちらの連載でコラムを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお付き合いください。
さて、「お寺でごはん」というと、皆様どのようなものを想像しますか?
おそらく、朱塗りのお盆に器がたくさんのっていて、白和えやごま豆腐など、色々なおかずがちょこちょこと。そんなものをイメージする方が多いのではないでしょうか。
これ、実際はちょっと違うんです。
そのギャップをお伝えするのにちょうどいい例があります。
今、日本には多くの国から観光客が訪れます。私のお寺のある浅草にも、実に多くの方が海外から観光に来ます。
そんな外国人観光客が楽しみにしているものの一つが、ズバリ「日本食」。
世界的にも評価の高い日本食を、本場で食べてみたいと多くの方が思っているようです。
では、実際にどんな日本食を期待しているかの調査では、このような結果が出ています。
1位がラーメン、2位は焼き肉、次いですき焼き、鉄板焼などの肉料理。
私達がイメージする“日本食”とはちょっとズレがあるようですね。
これと同じことがお寺にも言えるのです。
お寺のお坊さんだからと言って、普段から朱塗りのお椀でちょこっとずつ食べているわけではありません。
普通のお皿やお茶碗で、ごく普通の家庭料理と同じようなスタイルで食事をとっているのです。
こちらの連載では、家庭料理としても楽しめる「お寺ごはん」を紹介していきます。
とは言っても、そこはお寺。ご想像どおり、基本的には肉や魚を使いません。家庭料理の定番である肉じゃがも、お肉の代わりに車麩を用いるなどの工夫がなされています。お麩と言っても侮るなかれです。お麩が吸ったたっぷりのおだしが、一口噛むとじゅわっと口いっぱいに広がってとってもジューシー。
車麩…大1枚
じゃがいも…中1個
人参…1/4本
絹さや…3枚
昆布だし…1/2カップ
みりん…大さじ1
サラダ油…適量
(A)
酒…大さじ1
砂糖…小さじ1/2
醤油…大さじ1
1.車麩はAで戻し、8等分に切り軽く絞る。じゃがいもと人参は皮をむき一口大に切る。
2.鍋にサラダ油をひき、中火にかける。人参とじゃがいもを油が馴染むまで炒める。
3.昆布だしとみりんを加え、沸騰したら弱火にしてAと車麩を加え、落とし蓋をする。
4.野菜に串がすっと通るまで煮えたら器に盛り付け、すじをとってさっと茹でた絹さやを飾る。
水…400㏄
とろろ昆布…ひとつまみ
薄口醤油…小さじ1
みりん…大さじ1
三つ葉…適量
1.鍋に水を入れ、中火にかける。沸騰したらみりんを入れ、火を止めてから醤油を加える。味見をして薄ければ好みで塩(分量外)を加える。
2.お椀にとろろ昆布を入れ、1を注ぎ、刻んだ三つ葉を散らす。
おかずとしてもボリュームのあるこの「お麩じゃが」はお弁当のおかずにもピッタリです。 お肉を買い忘れちゃっても、乾燥のお麩があれば大丈夫。ぜひ一度お試し下さい。
次回は、ちょっと変わったおだしのとり方をお伝えします。
1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。
ユニット「料理僧三人衆」の一人として講演会「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。
【公式HP】https://www.ryokusenji.net/kaku/