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コラム

レンチン中に大爆発!?「焼き栗」を破裂させずに作るコツは“切り込み”だった

秋の味覚の一つ、“栗”。お菓子からごはん・おかず系まで、幅広く楽しめます。その中でも、おうちで作る焼き栗は、手軽に栗本来のおいしさが味わえますよね。でも、SNSでは「焼き栗を作ろうとしたら、栗が破裂した」という投稿が話題になることも。そこで、製品事故の調査を行っている独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)と協力して『皮を剥いていない栗』の加熱調理の実証実験を行いました。

レンジやオーブンで栗を加熱すると破裂の危険が!

今回の実験では、電子レンジ(以下、レンジ)と電気オーブン(以下、オーブン)で、数種類の下処理をした栗を加熱しました。
その結果、レンジ・オーブン共に破裂してしまう栗があり、庫内は大変な状況に…。でも、ある下処理をした栗だけは破裂しなかったんです!

実験概要

・加熱器具は、レンジとオーブンを使用
・栗は、横幅3cm程度のものを使用
・栗は、5分下茹でしてから、栗の皮に下記3種類の切り込み処理を行う(参照:図1)
レンジ(700W、3分)とオーブン(200℃または250℃、20分)で、それぞれ加熱

①切り込みなし
②切り込み1cm程度
③切り込み半周程度(横幅3cm程度の栗なら4cm程度の切り込み)
※切り込みの深さは、鬼皮だけでなく渋皮に達するまで入れる

図1:左から「切り込みなし」、「切り込み1cm程度」、「切り込み半周程度」の栗の様子(写真:NITE提供)

実験結果

今回の実証実験では、レンジ・オーブン共に、皮に十分な長さの切り込みを入れていない栗は破裂する可能性があることがわかりました。一方で、栗半周以上の長さの切り込みを、渋皮まで達する深さで入れると破裂しないという結果も得られました!(参照:表1)

(データ:NITE提供)

栗が破裂する原因は?

レンジ・オーブン共に、栗の皮の内部で生じた蒸気で内圧が高まったことが、破裂の原因と考えられます。
皮に切り込みがない栗では、栗の加熱により内部温度が高まり蒸気が発生し、その蒸気の圧力を逃がせずに内圧が高まって破裂したと考えられます。

また、皮に1cm程度の切り込みを入れた栗でも、破裂が起こりました。先と同様に内部温度が高まって蒸気が発生し、栗の内容物(栗の身)が切れ目に詰まって塞がってしまったことで内圧が高まり、その圧力を逃しきれずに破裂したと考えられます。

図2:左から「オーブンでの栗破裂後の栗の様子」、「栗の身が切れ目に詰まっている様子」(写真:NITE提供)

栗が破裂すると、火傷や発火のおそれも!

今回の実証実験では、栗に十分な切り込みを入れずに加熱した場合、食材を無駄にしてしまうだけでなく、3つの危険な点があることがわかりました。

1.破裂による火傷のおそれがある
今回、オーブン(200℃、20分)で加熱した際、栗は加熱時間9分〜20分にかけて破裂が生じました。その多くが12〜15分にかけて破裂しましたが、20分直後に破裂したケースも。
加熱中に破裂していなかったとしても、加熱直後に取り出した瞬間、急に破裂して、手指や顔などに熱い破裂物が飛んで火傷…という可能性も考えられますね。

2.庫内汚れの炭化による発火のおそれがある
破裂した際、栗がふたつに割れた状態になるケースもあれば、粉々になったり、大小さまざまな大きさの粒になったりして庫内へ飛び散るケースもありました。飛び散ってしまうと、掃除がとても大変…。(参照:図3)

掃除が十分に行き届かず、庫内に汚れが残ったまま加熱を続けると、汚れが炭化してしまい、それが発火するおそれがあります。

図3:左から「オーブンでの栗破裂後の様子」、「レンジでの栗破裂後の様子」(写真:NITE提供)

3.破裂物が原因で、機械故障につながる可能性がある
破裂した際、小さな粒がレンジのターンテーブルの溝の奥へ入り込んでいるなど、レンジ・オーブン共に、さまざまな隙間へ飛び散った栗が入り込む状況が確認できました。(参照:図3) 小さい粒が庫内内部へ入り込むことが原因で、機械故障につながる可能性も考えられます。

レンジ加熱する場合は、特に気をつけて

レンジは、オーブンと比べて、短時間で多くの栗が破裂する結果となりました。また、今回実験で使用したレンジにおいては、皮に切り込みなしの栗を加熱した際、破裂の勢いでレンジ扉が開いてしまいました。それほど、破裂の勢いが強い! ということがうかがえます。(参照:表1、表2)

(データ:NITE提供)

また、レンジでは、栗やぎんなんなど殻や皮付きの食材を加熱することに対して、取扱説明書などを通じて注意喚起がされているのはご存知でしょうか。
他にも、取扱説明書には、レンジ加熱で注意が必要な食材や調理法が記載されています。これを機に、ご家庭で使用する製品の取扱説明書を確認してみてくださいね。

破裂を防ぐ下処理で、焼き栗を楽しもう

今回の実験結果から、栗をレンジ・オーブンで加熱するときは、「栗半周以上の十分な長さの切り込みを、渋皮まで達する深さで入れる」ことが、破裂を防ぐために重要だと考えられます。

料理は、食材個々の性質や調理環境、家電、道具など様々な条件で結果が異なってくるものですよね。「ご家庭のオーブンの特徴を知って、温度や加熱時間を調節する」という話を耳にすることもあるかと思います。ですので、今回の結果を一つの参考情報として、ご家庭の状況に合わせてご活用ください。

また、レンジ・オーブンに限らず、栗を調理器具で直接加熱するときは、同様の理由から栗が破裂してしまう可能性が考えられるので、ぜひ、長さ・深さを意識して切り込みを入れて調理することをおすすめします。

焼き栗が好きだけど、手作りしたことがない方。毎年、栗の料理をしている方。ぜひ、この情報を参考に、この時期ならではの旬食材「栗」のおいしさを味わってくださいね。

取材協力:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)

NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)は「安全とあなたの未来を支えます」をスローガンに、経済産業省所管の法令執行や政策を技術的な面から支援している公的機関です。製品安全センターでは、家庭用電気製品等の事故の原因究明を再現実験により検証し、その結果を情報発信することで、製品による事故の未然防止に貢献しています。

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