世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんが、各地の台所から、料理を楽しむヒントをお届けします。
暑い時期においしいオクラ。夏バテ気味の体によいだけでなく、血糖値上昇の抑制などのダイエット効果もあると言われています。
今回はみなさんが知らない楽しみ方を、オクラ使いが巧みなアフリカのスーダンの台所からお届けします。
和食にもよく使われるオクラですが、実はその原産は日本やアジアではなく、遠く北アフリカのエジプトあたりと言われています。エジプトのすぐ隣に位置するスーダンも、オクラとの付き合いの歴史が長く、様々な料理法で巧みにオクラを使いこなしています。
スーダンの台所で一緒に料理をしながら、オクラの使い方を教えてもらいました。
これは私たちにも比較的想像しやすい料理法。トマトベースなどの煮込み料理に、具材としてまるごと一本投入します。
このときのちょっとしたコツは、オクラの頭をスパッと横に切らず、尖った鉛筆型に切ること。 こうすると断面が塞がった状態のまま、中から種や粘りが流出することなくきれいに煮込めます。 とろみを中にとどめて具としてオクラを煮たいとき、ちょっと真似してみたい切り方ですね。
先ほどとは反対に、形がなくなるまで崩して、スープのとろみにしてしまうという調理法も。頭を切り落としたオクラは輪切りにして、1の時と同様トマトベースの煮込み料理に投入します。
そしてここからが注目。 木のかき混ぜ棒を両手でくるくる回し、オクラの繊維を砕きます! その様子はまるで手動のブレンダーのよう。たくさん叩かれたオクラは、やわらかくなり砕かれ、スープの一部になってとろみを与えます。
日本で真似するならば、包丁で細かく刻むかブレンダーで細かくして鍋に入れるのがいいですね。
そして私が最もユニークで驚いたのは、この 「ドライパウダーにしてとろみ付け」 という使い方です。
ある日の昼食、牛肉とトマトのシチューをつくっていて、最後に薄緑の粉が取り出されました。おもむろに鍋に振り入れると、シチューにみるみるとろみが付いていきます。少量の粉が鍋いっぱいのシチューをまとめていく様子は、見ていてなかなか楽しいです。
とろみがついたら、クレープ状の主食にかけていただきます。
スープやシチューに粘り気がつくことで、いいことが2つあります。
1つは手で食べやすくなること。スーダンは手で食べる文化の国です。とろみが付くことで主食のクレープにも絡みやすくなり、大勢で食卓を囲んでも不便なく手づかみで取り分けられるようになります。
2つ目は、お腹にたまること。とろみが付くことで一気に満腹感が上がり、ほんの少しの量でもお腹いっぱいになれます。実際、滞在先の家族に「味も香りもないのにどうしてオクラの粉を入れるの?」と聞いたところ、「その方がお腹いっぱいになれるから。サラサラしたスープではすぐにお腹が空いてしまう」という答えが返ってきたのでした。限られた食料をみんなで効率的に分けあうための知恵なのでした。
細かく刻んで砕いたり、ドライオクラにしてスープやシチューに入れるこれらの知恵は、食べ過ぎ防止になるという価値もありそうですね。いつもの汁物に砕いたオクラや粉末を少々入れて、試してみてはいかがでしょうか。
スーダンの市場に行くと、ドライのオクラが山積みになっています。購入すると、その場で挽いて粉にしてくれます。
しかしこのドライオクラ、家庭でつくることもあります。お邪魔した家庭では、料理で余ったヘタの部分を乾燥させ、粉末にして使っていました。通常捨ててしまう部分ですが、実はここだって食べられます。乾燥させて粉末にすれば、繊維の強さも気になりません。
さすがオクラとの付き合いの歴史が長いだけあって、最後の最後まで使い尽くす、すばらしい知恵を持っているなあと感動したのでした。
夏の食卓を彩ってくれるオクラは、普段和え物にしたりサラダにすることが多くなりがち。スーダンの台所の知恵をちょっとお借りして、料理のとろみ付けにも使ってみてはいかがでしょうか。ネバネバオクラで、暑い毎日を元気に楽しく乗り切りましょう!
台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
公式ブログはこちら>>