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コラム

夏野菜の食べ方新発見☆まるでハチミツのように甘くて美味しい“まっ黒焦げ焼き”【世界の台所探検】

世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんが、各地の家庭料理をお届けします。

なすやトマトなどの夏野菜がおいしい季節ですね。 でも毎日続くと、食べ方がマンネリ化して飽きてきたりしませんか?
これらの野菜は世界でも広く食べられているもので、日本では馴染みのない多様な食べ方がたくさんあります。

今回は、世界の台所のレシピの中から、特に私がびっくりして感動した「まっ黒焦げ焼き」を紹介します。

まっ黒焦げ焼きって?

野菜を直火やグリルで真っ黒になるまで焼き、皮をむいてとろとろの中身だけをいただく食べ方です。 限界まで加熱された野菜はものすごく甘くなり、また食感もとろとろに変わるので、料理の幅が広がります。

画像提供:PIXTA

このまっ黒焦げ焼きは主に中東から東ヨーロッパの食卓でよく出会うのですが、現地では、炭火で料理した最後に放り込んで作るような「直火ならではの料理」でもあります。

でもIH調理器の入った日本の台所でもどうしても作りたくて、魚焼きグリルやオーブンでまねしてみました。オーブンだと直火ほど真っ黒にならないのが難点ですが、ほったらかしにできるのが楽ちんです。

どんなまっ黒焦げ焼き料理がある?

パプリカ

最もシンプルなのは、まっ黒焦げパプリカの皮をむいてそのまま刺身のように食べる食べ方。セルビア周辺のバルカン半島の国々で、前菜として食べられています。

焼いたパプリカの甘いことといったら、まるでハチミツみたい!温かいうちに食べたら、もう何もかけなくてもいいくらいです。

この地域は、夏の暑い季節には旬の野菜がたっぷり採れますが、裏腹に冬は寒さの厳しいところ。ブルガリアの家庭では、「パプリカの刺身」をオイル漬けにして冬のための保存食として瓶詰にしていました。この土地ならではの工夫ですね。

また、まっ黒焦げパプリカをピューレにしてトマトなどとともに煮たペーストも、この地域の伝統的な保存食で、パンに塗って食べたりします。

サラダの彩り野菜のイメージが強いパプリカが、形を変えて季節を越えて、主役として大活躍するなんてびっくりですね。

なす

和食で定番の焼きなすですが、実は世界にも兄弟たちがいるんです。

トルコには、まっ黒焦げに焼いたなすの中身とごまペーストでつくる「ババガヌーシュ」という前菜があります。近隣の国々にも似た料理が多々あり、私がお邪魔したスーダンの家庭では、なすとヨーグルトとピーナッツクリームで作っていました。
ヨーグルトを入れることでさっぱりし、また生にんにくの風味がガツンと効いて、40度を超える暑さでも食が進みます。

じっくり焼いたなすは、切らなくても崩れるくらいとろっとろ。なすってこんなに柔らかくなるんだ!とびっくりしてしまいます。「皮のかけらが入ると焦げ臭くなってしまうからね」と丁寧に皮をむきます。

この家庭では、毎日炭火で料理します。料理が終わる頃、おきの状態になった炭火になすを放り込み、ほったらかしにして黒焦げにします。じっくりじっくり焼くその時間が、忙しい日常の時の流れをリセットしてくれるようでもありました。

その場で食べるもの以外にも、トルコではまっ黒焦げなすをペーストにした「キョポル」という保存食がよく自家製されるそうです。

トマト

トマトは、実は世界で最もたくさん食べられている野菜でもあります。生でもおいしいですが、焼くとさらにレパートリーが広がります。

タイ山岳部の村の家庭では、焼いたトマトに魚醤・にんにく・パクチーなどを加えてディップをつくっていました。オイルなどは入らないのでさらっとしてヘルシー。唐辛子やねぎなどで香りを加え、その時々の味を作ります。ここに山から採ってきた山ほどの生野草をつけて食べます。

トマトの甘味に魚醤のうまみが加わり、さらにとれたてのハーブ類が香りを増し、野菜がいくらでも食べられてしまいます。 
この地域では、毎日山から野草を採ってきて、食料の大部分を自給しています。料理自体だけでなく、野菜につけるソースでさえもささっと自家製できてしまうなんて、なんだか力強くてかっこいいと思ったのでした。

この夏、まっ黒焦げ野菜に挑戦を!

オーブンのレシピを紹介しましたが、ガスコンロで網焼きするでも、魚焼きグリルでも、トースターでも、ご自分の台所環境に合わせて自由にやってみてください。

野菜が豊富なこの時期に、いつもの食べ方に飽きたら挑戦してみませんか?BBQで作ったら注目を浴びるかも。夏野菜の新しいおいしさ、楽しんでみてください。

岡根谷実里さん

台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
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