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コラム

幻のチーズケーキ『Mr.CHEESECAKE』生みの親に聞く「人生最高においしいチーズケーキ」の作り方

毎週、日曜日と月曜日に数量限定で発売される『Mr.CHEESECAKE』のチーズケーキ。販売と同時に売り切れてしまうので、“幻のチーズケーキ”と呼ばれるほど人気です。実は、その『Mr.CHEESECAKE』のチーズケーキを自宅で楽しめるレシピ本が発売になっています。今回は、Mr.CHEESECAKEの生みの親である田村浩二さんに、レシピ公開の理由やチーズケーキとの出会いについてお話を聞きました。記事の最後には、幻のチーズケーキのレシピも紹介しています。

料理人を目指すことになった意外なきっかけ

――田村さんがお料理の世界に入ったきっかけを教えてください。

高校生のときに、親友のために誕生日ケーキを焼いたことがあるんです。学校に持って行ったら、親友や周りの友達がすごく喜んでくれて、その顔を見たときに、「こういうことを仕事にできたらいいな」と思ったことがきっかけです。

――高校生のときに、手作りケーキを作るってすごいですね。お菓子作りが趣味だったんですか?

僕は、子どもの頃から高校3年生まで野球漬けの生活をしていたので、それまでは料理をしたことも包丁を持ったこともありませんでした。親友のための誕生日ケーキが初めての料理と言ってもいいくらいです。ただ、僕の母がおやつに揚げたてのドーナツを出してくれたり、誕生日ケーキを手作りしてくれる人でした。そんな環境で育ってきたので、自分も作れるような気がしたんです。それで、ネットで検索したレシピで、バナナとマスカルポーネ、チョコレートを使ったマーブル状のショートケーキを作りました。

――田村さんがチーズケーキを作る原点は、お母さまの作るケーキにあったんでしょうか?

誰が食べてもおいしくて、みんなが喜ぶものを作りたいという想いで『Mr.CHEESECAKE』を立ち上げたのですが、そのきっかけになったのは、僕が当時働いていたフランス料理店で食事をした母が言った、「おいしかったけど、よくわからなかった」という言葉なんです。母を含め誰が食べても「おいしい」と思ってもらえるものは何だろう、と考えたときにチーズケーキが浮かびました。母は、僕の誕生日にレアチーズケーキやニューヨークチーズケーキをよく焼いてくれたので、それが思い出に残っているんです。

記憶に残るのは「おいしさ」と「香り」

――誰が食べてもおいしいというのは、とても難しいですよね。田村さんが「おいしい」を作る上で大切にしていることはなんですか?

口にするものには常に意識を向けるようにしています。1日3食食べると、年間で約1,000回食事をすることになります。1回の食事で5種類の食材に触れるとしたら、年間でだいたい5,000種類の食材に触れることになるので。1回の食事ごとに味覚や嗅覚などに意識を向ければ、年間でかなりの数の情報を得ることができますよね。

また、良い食材に触れたり、コンビニやスーパーで手に入るスイーツや料理を定期的に食べるようにしています。ここ5、6年で特にコンビニスイーツのクオリティが上がってきたなと感じます。そうなってくると、僕たちのような料理人やパティシエは、自分が作る料理やスイーツにコンビニの商品とは違ったおいしさや別の体験で価値を見出すことも常に意識していなくてはいけないなと思います。

あと、食べたものは、「おいしい」「おいしくない」と直感的に判断するだけじゃなく、その理由、改善点までしっかり言葉にしています。おいしくする提案までしないとただの批判になってしまうから。

――口に入るものへのアンテナ以外にも、見せ方や出し方へのアンテナも高そうです。商品を作る上で田村さんが意識していることはなんですか?

SNSが広まったことで、食べ物もビジュアルで訴求するものが増えてきました。もちろん、ビジュアルの美しさで興味を引くのは大切なことだと理解しつつも、インパクトだけで気を引くのは避けたい気持ちがあります。食べた後に記憶に残るのは「おいしさ」とか「香り」で、ビジュアルが1番に出てくるものは少ないと思います。だから、必要以上に美しくしなくてもいいかなと思っています。

やっぱり、食べ物はおいしさが1番なので、僕が作るものは、美しく見せるためということよりもおいしさが1番伝わる形を選んでいます。例えば、本の中でプリンをパウンド型で焼いているのは、あのサイズで焼くことで中がトロっとするから。おいしさのための“機能美”を意識しています。

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