料理研究家・小田真規子さんが教える、料理の失敗を回避するためのたった2つのコツと上達への近道

料理研究家・小田真規子さんが教える、料理の失敗を回避するためのたった2つのコツと上達への近道

【自炊の教科書 vol.1】料理初心者さん向けのレシピ本を執筆された著者の方をゲストにお迎えして、料理のキホンと自炊のコツをレクチャーいただきます。自著の中から、初めての料理にオススメのレシピも合わせてご紹介。肩肘張らずに楽しく自炊を始めてみませんか?

【今回のゲスト】料理研究家・小田真規子さん

連載初回のゲストは、多くの料理雑誌でレシピをご提案し、NHKの人気番組「あさイチ」や「きょうの料理」にも出演されている、料理研究家の小田真規子さん。

これまで数多くのレシピ本を出版されてきた小田先生が、2020年2月に発売した『自炊のトリセツ』(池田書店)が注目を集めています。

新型コロナウイルスによる自粛生活の中で、自炊を始めた方、日々の料理を見直した方など、さまざまな読者ニーズに寄り添う“自炊のバイブル”となっている本書をもとに、小田先生に自炊を楽しむコツを教えていただきました。

全5回でお送りする小田先生のレクチャーの第1回目は、自炊を始めるにあたってまず知っておきたい「料理の失敗回避法」と「上達が早くなるポイント」をお届けします。

小田 真規子さん

9094ab25db5e2409aec92bdfb20f4441 料理研究家・栄養士。女子栄養大学短期大学部卒業後、アシスタントを経て料理研究家に。健康に配慮した、誰もが作りやすく、おいしい家庭料理をテーマに、雑誌・TV・webなどでオリジナルレシピを紹介。身近な材料を生かしたわかりやすいレシピは年代を問わず好評で、手軽なつくりおきや、料理の基本などの著書は100冊を超える。また、スタジオナッツ代表としてフードディレクターを務め、企業へのメニューアドバイスやレシピ提案のほか、広告・宣伝、販促などをサポートするフードスタイリングやコーディネートも数多く行っている。インスタグラムでは、独自の視点から毎週料理のコツを発信中。
【Instagram】studionutsnuts 小田真規子(パプリカマキコ)

「原点に戻って料理を学び直したい」という人にも

――『自炊のトリセツ』は、まさに「自炊」をするにあたって必要な知恵やコツが丁寧に解説された本ですが、どのような経緯で作られたレシピ本なのでしょうか?

『自炊のトリセツ』は、もともとは編集者の方の「毎日料理はしているけど、うまく作れている気がしない」という悩みから生まれた本なんです。

実は、毎日キッチンに立って料理を作っているという人の中にも、「これでいいのかな?」と、なんとなく腑に落ちない気持ちや料理の悩みを持っている方は少なくないんですね。

『自炊のトリセツ』と聞くと、料理初心者向けの本というイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、この本には、実は普段料理をよくしている人たちが本当に知りたかったことも詰まっています。

――発売後、期せずして新型コロナウイルスによる自粛期間がスタートし、初めて自炊をする必要に迫られ、この本を手に取られたという方も多かったのではないでしょうか?

そうですね。そうした本当に初めて料理をするという方はもちろんですが、同時に、普段から料理をしている方も自炊の頻度が増え、また家で過ごす時間が増えたことを機に、改めて普段の料理を見つめ直すために手に取ってくれたケースも少なくなかったようです。「原点に戻って料理を学び直したい」というニーズに、この本が応えられたようで嬉しいですね。

私の本だけではなく、自炊をテーマにした本は一人暮らしの方や、主婦の方が手に取ったり、一人暮らしを始めるお子さんのためにお母さんが用意して渡したり、読者層は広いと思います。

それに、最近は男性の読者も増えているんですよ。おうち時間が増えたことをきっかけに料理に挑戦するようになったり、家庭内で家事を分担するようになって料理を学ぼうと思い立つ30代、40代の男性が増えているんだと思います。

今は、スマートフォンで簡単にレシピを見ることができる時代ですが、基礎となる本を手元に置いて読んでいる方が増えている印象です。

「おいしくできた」という経験を積んでほしい

――この本は、ページが180度開く作りになっていますよね。手で押さえずにちゃんと読めるようになっていて、「なんて読者のことを考えられた作りなんだ!」と感動しました。この本にはそういった細やかなこだわりがたくさん散りばめられている気がします。

料理に慣れていない人が本を見ながら料理をする時、閉じないように工夫しながら作業するのって大変ですよね。料理に集中するためにも大事だと思ったので、ページは180度しっかり開く作りにしました。

本の内容でこだわった部分は、あまりいろんな料理を入れすぎないということ。

この本には、最低限知っておくべきだと思うレシピを載せました。中には、「これって料理なの?」と思われそうなレシピも載っています(笑)。

難易度1のレシピもあれば、上級者向けに感じるものもあります。料理を覚えていけばこんなこともできるようになるよというのを盛り込みました。

――載っているレシピがすべて簡単だと物足りなさを感じそうだし、逆に上級者向けなものばかりだと怖気づいてしまいますよね。この本はそのバランスが絶妙だと感じました。

自炊をしている方で、毎日ウルトラCのような料理ばかり作っている人はいないですよね。自炊が上達するというのは、いろんなランクのレシピが頭の中にあって、それを使い分けられるようになるということだと思うんです。

料理がうまくなりたい人にとっては、「できるかもしれない」とか、「もうちょっとやってみよう」という気持ちが大事。作った料理が「おいしくできた」という経験を積んでいくことが自信になって、それがあるからこそ、また次のレシピに挑戦しようという気持ちにもなりますよね。

自炊の本が持つ役割はそこが重要だと思っています。高度なテクニックが必要なレシピ本や、お洒落な見栄えがする料理を集めた本はすでにたくさん溢れているので、この本は逆に、特別なテクニックがなくても作れる、成功体験を積んで料理に自信が持てるようになるための本だと思っています。

――この本には、小田先生が料理初心者だったころにつまずいたポイントや実体験も盛り込まれているのでしょうか?

私が料理を習っていた頃やアシスタント時代は、「下味をつけて焼きます」という手順は教えてもらっても、なぜ下味をつけるのかという理由や、下味をつけて置く時間やどのくらい焼くと良いのかをロジックで解説してもらう機会があまりありませんでした。どういう状態になれば良いかを、「見て覚える」という時代だったんですね(笑)。

ですが、「なぜ?」を知らないままだと、私の場合はいつまでたっても覚えられないことがあったり、うまくなった気がしないということが多々ありました。ですから、それを乗り越えるために知識を得ることにしたんです。

ロジックに基づいた料理の手順やコツ、豆知識を覚えると、理解度が深まって、「料理がうまくなった!」と実感できるようになります。失敗した時にも原因を遡れるようになりますし、何より、ちょっとした料理の裏ワザや小ネタって、知るとつい誰かに話したくなるじゃないですか(笑)。自然と料理が楽しくなってくるんですよね。ですから、この本にはそうした「なぜ?」や裏ワザを意識して盛り込んでいます。

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料理は、回数と時間を重ねないとうまくならないという考え方もありますが、私は再現性だと思っているんです。

どんな人が作っても70点は取れる、あるいは10人のうち7人がおいしいと思える料理が完成する。そんなレシピを提案できるようにならないと、前に進めないと昔から思ってきました。

3つ星は取れなくてもいいけど、限りなく1つ星に近い料理を作れる人が増えることが、おいしいものを食べられる人を増やすことにつながるのではと考えています。

料理の失敗を回避する2つのポイント

――料理に失敗はつきものだと思うのですが、初心者がやりがちな失敗にはどんなものがありますか?

料理の失敗には、大きく分けて4つのパターンがあります。まず1つ目は「味がしない」。2つ目が「煮過ぎてドロドロになる」。3つ目は「味付けのバランスが崩れている」。4つ目が「生焼け、焦げすぎ(火加減)」です。

これらを回避するポイントは2つ。下味をちゃんとつけることと、食材の数を多くしないことです。

下味がきちんとついた状態で調理をすれば、味がしないことはもちろん、味が薄いなと思って調味料をあれこれ加えすぎて味付けのバランスが崩れてしまうこともなくなります。

そして食材の数を絞ることで、火が入りすぎてしまったり、逆に食材によって火が通っているものと生焼けのものとが混在してしまうなんて失敗も減りますよ。

――下味をちゃんとつけるというのは、具体的にどういうことですか?

塩を使って、下味をつけるんです。醤油や味噌だけで味つけをするよりも、仕上がりの味のまとまり方が全く違ってきます。

大事なのは、塩をしたらある程度味がなじんでから調理を始めること。塩をしてすぐに調理してしまうと、塩が食材にしっかり入っておらず、調理途中で流れ落ちてしまって失敗の原因になります。

お塩が決まっていると、ケチャップや醤油を足していっても味がしっかりまとまります。下味がついていないままこれらの調味料を足すと、ただ食材の表面に調味料がコーティングされているだけになってしまい、何となく物足りない味つけになってしまうんです。

「記憶に残る料理」をつくることが上達への近道

――食材の数を絞るというのも、ついついたくさん食材を使った方がおいしくなったり、豪華に見えそうと思いがちですが、気をつけたいポイントですね。

前述した通り、思い切って食材を減らすことで火加減の失敗が減るだけでなく、素材自体の味が際立っておいしく仕上がるというメリットがあります。そして何より、何を食べたかという記憶が残りやすくなり、再現性も高まるのです。

「昨日、何食べた?」と聞かれた時に、「炒め物」と答えるのではなく、「鶏とピーマンの炒め物」とメニュー名が言える、記憶に残る料理をつくることって実はすごく大事なんですよ。

どうしても日々の料理が「名もなき料理」になりがちという方は多いのではないでしょうか? 「自分には得意料理なんてない」「大したもの作ってない」という気持ちから、ただの「炒め物」と言ってしまうのだと思うのですが、ちゃんとメニュー名を言えるようにしていくと、意識が変わって料理の上達も早まります。

高級レストランで食事をするととても手の込んだものを提供されている気がしますが、よく見るとシンプルなソテーに「〇〇ソース添え」、「〇〇仕立て」など、ごく絞られた材料でひと手間を加えているメニューが多いものです。

同じように、自分自身でつくる普段の料理にもひと工夫し、「◯◯の照り焼き、胡椒風味」や「青のり仕立て」、醤油を使わずに作ったきんぴらを「○○の塩きんぴら」などと名前を付けてあげるだけで、きちんと料理をつくった実感を感じられるようになるはずです。

そうして自分で名付けたお料理は、次は組み合わせを変えてみたり、アレンジを加えることもできるようになり、より再現性が高まっていきます。

――確かに! 自分の料理に自分で名前が付けられるようになれば、応用力もつきますね。

自炊を始めたら、レシピではなく、自分がつくった料理名をぜひメモしてみてください。ポイントは、食材をしっかり入れたメニュー名を付けてメモすること。「グリンピースと豚肉の炒め物」とかですね。

このメモがあれば、あとで見直した時にも使った食材がわかりますし、振り返りもできて、だんだんと料理がうまくなっていることをきっと実感しやすくなると思います。

名もなき料理を作っていると、なんだか毎日の食卓をさみしく感じてしまうかもしれませんが、ちゃんと名前を付けてあげるだけでぐっと充実した食事をしている感覚になります。自分でせっかくちゃんとつくっているのだから、自分が料理をしていることを自信を持って認めてあげてくださいね。

◇ ◇ ◇

今回は、自炊を始めるにあたってまず押さえておきたいことを小田先生にレクチャーしていただきました。
次回は、『自炊のトリセツ』の中から、自炊初心者の方に特におすすめの卵を使ったレシピをご紹介していきます。お楽しみに!

(TEXT:上原かほり)


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絶対に失敗しない卵料理(ゆで卵、味玉、ふんわりやわらかい卵焼き、卵とじなど)や、節約&使いやすい食材の超簡単レシピ、焼く、煮る、炒めるなどの基本の工程をマスターするレシピや炊飯器で一気に三品作るレシピなど、料理の基礎を楽しく覚えられる本です。

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