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コラム

油はね防止でやってませんか?揚げ物をするときに「蓋」をすると危ない理由

一度にたくさんの量が作れて家族ウケも抜群の“揚げ物料理”。揚げ物鍋でなく、お手軽なフライパンで揚げ物をすることもありますよね? そんなとき、気になるのが油はね。油がはねないように蓋をしたくなりますが……ちょっと待った! それ、とても危ないんです。今回、製品事故の調査を行っている独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)と協力して実証実験を行いました。

揚げ物に蓋は危険!その理由とは?

フライパンで揚げ焼きや揚げ物をする際、油はねを防ぐために「蓋」をする人が増えています。でも、それは火事を招く恐れのある危険な行為なんです。

なぜ蓋をすると危ないの?

1.油の過熱に気づかず発火の恐れがある
蓋をすることでフライパンや鍋の中は空気(酸素)が供給されない状態が続きます。NITEの実証実験では、油の温度が発火温度に達していても、蓋が発火に必要な空気(酸素)を遮断して、発火はしませんでしたが、蓋を開けたとたん一気に空気(酸素)が流れ込み、発火してしまいました。揚げ物に蓋をするのは大変危険です。

26cmフライパンに150mlの油を入れて、蓋をして加熱。油温が400℃を超えた辺りで蓋を取り外したところ、空気(酸素)が流入して一気に発火した。(写真:NITE提供)

2.蓋に付いた水滴による火傷の危険
一度蓋をあけて大丈夫だったからといってまた蓋をした状態に戻して加熱を続けるのも危険です。NITEの実証実験では、蓋をした状態で揚げ物をすると、時間の経過とともに食材(冷凍ポテト)に含まれる水分が蒸発し、蓋の裏に大量の水滴が付いている様子が観察できました。一見異常がなくても、蓋をあける際に蓋に付いた水滴が油の中に落ちると、水蒸気爆発により高温の油が周囲に飛び散って、火傷をする危険があります。

26cmフライパンに150mlの油を加熱し、冷凍ポテトを入れて蓋をしたまま揚げた。蓋の裏に付いた水滴が落ちて、油が蓋内に飛び散っている様子。(写真:NITE提供)

3.危険を察知しにくい
油の温度が上がり、約250度を超えると通常は油煙が発生します。NITEの実証実験では、蓋をしていると油の温度が上がりやすくなるうえ、蓋により油煙が外に出ずに、中が見えにくい状態に。そのため、油が発火する温度に達する前に、過熱に気づくのが遅くなってしまいます。フライパン用のガラスの蓋でも、煙が充満してしまうと中が見えないのでNGです。

油温340度付近の様子。蓋をすると煙が立ち上らないので気づきにくい。 (写真:NITE提供)

少量の油で揚げものは要注意!

最近は少量の油で揚げ物、揚げ焼きをする人が増えていますよね。しかし、これも注意が必要なんです。蓋の有無にかかわらず油が少ないとIHクッキングヒーターやガスコンロの安全機能がうまく働かずに発火する場合があります。NITEの実証実験では、鍋やフライパンの底から3mm~1cm程度の油で発火してしまいました。IH、ガスコンロともに、揚げ物をする場合の最低油量が決められています。取扱説明書をよく確認しましょう。もし、揚げ焼きなどをする場合は、フライパンから目を離さず、キッチンから離れず、しっかり目視で確認しながら調理をすることが大事です。

IHなら大丈夫は誤解です

火を使わずに調理できるIHクッキングヒーター。ガスコンロと違い、コンロの炎が油に引火することはないので大丈夫だと思っていませんか? 加熱によって油の発火温度に達すると、フライパンや鍋の中の油だけで発火し、火災を引き起こすことがあります。

また、最近では、IHは火を使わないという安心感からか新聞紙を蓋やシートがわりにして油はねを予防している人が増えてきていますが、これは大変危険なのでやめましょう。

26cmフライパンに500mlの油を入れて、新聞紙で蓋をした。IHで加熱し、油温が約365℃に達した時、新聞紙の端が発火する様子が確認された。(写真:NITE提供)

火がなくても可燃物をトッププレートにおいたり、近づけたりしてはいけません。むしろ、新聞紙は油よりも発火する温度が低いため、油より先に発火する可能性もあります。

まだまだ暑い夏、揚げ物片手にビールを一杯! という人も多いと思いますが、揚げ物調理をする際は、油量が少なくても、IHであっても、「蓋」は危ないので注意しましょう。安全に調理して、おいしい揚げ物を味わいましょう。

(TEXT:河野友美子)

取材協力:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)

NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)は「安全とあなたの未来を支えます」をスローガンに、経済産業省所管の法令執行や政策を技術的な面から支援している公的機関です。製品安全センターでは、家庭用電気製品等の事故の原因究明を再現実験により検証し、その結果を情報発信することで、製品による事故の未然防止に貢献しています。

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