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コラム

91歳の料理研究家に教わるお正月のお作法〜「祝い肴三種」と「お雑煮」のススメ

料理の長寿番組「きょうの料理」(NHKEテレ)で40年以上にわたって、お茶の間に家庭料理を伝え続けている現役最高齢91歳の日本料理研究家・鈴木登紀子さん。“ばぁば”の愛称で知られる鈴木さんに「料理のイロハ」を教えてもらう、短期集中連載です。

今年も残すところあとわずか、あっという間の一年にため息つく間もなく、お忙しい日々をお過ごしのこととお察しいたします。ばぁばも今年最後のお教室を終え、あともうひと頑張り!の師走でございます。

祝い肴三種とお雑煮があれば、立派なお正月です

私のお教室では、毎年11月と12月、2回に分けておせち料理を23品ほど作るのが恒例となっております。昨今、おせちをお作りになるご家庭は少ないかもしれません。私の生徒さんも「全部は無理です」とおっしゃいます。

しかし、せめて…とばぁばは毎年お願いするのです。何はなくとも、祝い肴三種(黒豆、田作り、数の子)とお雑煮だけは、その手でお作りいただきたい。これさえ揃えば、立派なお正月ですよ、と。「黒豆」はしわが寄るまで息災に、「田作り」は豊作を祈願して、「数の子」は子孫繁栄を願ったもの。これにお雑煮を添えて、元旦の祝い膳は家族全員で囲んでいただきたいと、切に思います。

お雑煮は、おせちと同様に、各地方・ご家庭によってそれぞれ特色があり、おみそ汁や煮ものと並んで“おふくろの味”の代表格です。私の母が作ってくれた「南部雑煮」は、イクラがたっぷり入った豪華なものでした。故郷の青森県八戸市は海の町でしたから、こんなぜいたくができたのでしょう。今でもわが家では、三が日はこの南部雑煮をいただきます。イクラを少し添えるだけで、気の利いたお客さまへのおもてなしにもなりますよ。

そして4日目以降はと言いますと、せん切り大根を主体に、にんじん、油揚げなどを具材にみそで味を調えた上で、青みにせりを散らした「ひきな雑煮」をいただきます。ごちそう攻めの三が日の後に、体にやさしい「ひきな雑煮」は、まことに理にかなったものと思います。こんな素朴なお雑煮もまた、私にとりましては、忘れがたき“おふくろの味”です。

余力があれば「お煮しめ」と「紅白なます」にも挑戦!

もしも、あと1〜2品、おせち料理に挑戦してみてもよいかしら…と思っていただけるのでしたら、ぜひ「お煮しめ」と「紅白なます」を。ばぁばのお煮しめは、冷たくしてこそおいしいの。大晦日にお鍋いっぱいに作って密閉容器に移し、冷所で保存しておけば、三が日をゆったりと過ごせます。

紅白なますは1週間ほど日持ちしますから、12月30日に仕込みます。作り方はまず、大根(約600g)を4cm厚さに切って皮をむき、縦に薄く切ります。これを少しずつずらしてまな板に並べて縦のせん切りに。にんじん(60g)も同じ長さに縦のせん切りにしてください。

大きめのボウルに大根とにんじんを入れて塩大さじ1をふり、はじめはそっと、水気が出てきたら次第に強く手でもんで、しんなりさせます。ちょっと指先を舐めて塩加減を確認し、ほどよい塩気が伝わってきたら、少し水気が残るように絞ります。蓋付きの容器へ移し、砂糖大さじ3、酢大さじ4を加えてまんべんなく混ぜ、蓋をして冷蔵庫へ入れます。

1日に2〜3回混ぜて味をなじませてください。2日目くらいから食べごろになりますから、ちょうど元日にはおいしくいただけます。シンプルかつ胃にやさしく、お雑煮のお供にもうってつけの、格好のお口直しになります。

みなさんも、それぞれの家庭の味を受け継ぐ「小さなおせち」を新年の恒例にしてみませんか?

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